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慢性骨髄性白血病(CML)の情報サイト

2021年2月28日にWeb市民公開講座「慢性骨髄性白血病(CML)とともに 自分らしく活きるために」を開催しました。みなさまが自分らしくイキイキと活きるために、治療や検査に関する情報や主治医とのコミュニケーションについて紹介しています。ぜひご覧ください。

開催:2021年2月28日(日)

Web市民公開講座 慢性骨髄性白血病(CML)とともに 自分らしく活きるために

2021年2月28日(日)、Web市民公開講座「慢性骨髄性白血病(CML)とともに 自分らしく活きるために」を開催いたしました。はじめに小野 孝明先生(浜松医科大学)に「慢性骨髄性白血病の治療 患者さんが自身の治療内容を理解するために知っておくべき事」と題してCMLという病気、治療についてご講演いただきました。続いて小林 竜太郎氏(慢性骨髄性白血病<CML>患者・家族の会「いずみの会」)に、「CMLになって気づいた大切なもの ~自分を支えてくれる方々とのつながり~」と題してご自身のご経験をご講演いただきました。最後に木崎 昌弘先生(埼玉医科大学総合医療センター)、小野 孝明先生、小林 竜太郎氏の3名で「患者さんと医師のコミュニケーションを考える」をテーマにクロストークを行いました。

木崎 昌弘先生

司会:木崎 昌弘先生

埼玉医科大学総合医療センター 血液内科 教授

小野 孝明先生

演者・パネリスト:小野 孝明先生

浜松医科大学 血液内科 講師

小林 竜太郎氏

演者・パネリスト:小林 竜太郎氏

慢性骨髄性白血病(CML)患者・家族の会「いずみの会」
副代表

講演1 慢性骨髄性白血病の治療
患者さんが自身の治療内容を理解するために知っておくべき事

小野 孝明先生
(浜松医科大学 血液内科 講師)

講演時間の目安

  • オープニング:02:18
  • 疾患概念:02:19~05:41
  • 治療方法:05:42~08:43
  • 治療目標:08:44~11:36
  • 治療の副作用と問題点:11:37~20:09
  • 今後の展望:20:10~27:46
  • Q&A:27:47~34:34

小野先生のご講演では、CML患者さんの治療に役立つ情報として、CMLの病気の成り立ち、治療の現状や副作用などについてわかりやすくご説明いただきました。
慢性骨髄性白血病(CML)は、体内でつくられるBCR-ABL 1融合蛋白による作用で白血球が無秩序に増加することが原因で発症します。2000年代初頭にこのBCR-ABL 1融合蛋白を標的とするチロシンキナーゼ阻害薬(TKI)が登場し、現在のCML患者さんの生存率は90%以上となりました[1]
CMLの治療では、血液中の正常な蛋白(ABL1)に対するBCR-ABL 1融合蛋白の割合=IS(international scale)を下げることが重要です。TKI治療によってこの割合を十分下げることで、病気の進行を抑えて元気で過ごせる確率が高くなることが報告されています[2][3]
TKI治療中の健康管理と生活の質を守るためには、副作用の管理と服薬の継続がカギとなるため、主治医が副作用の種類や程度、患者さんの辛さを理解することが重要である、と小野先生は強調されました。
ご講演ではTKIの中止(※1)についても触れられ、「TKIを中止できても約半分の方は再発の恐れや不安を感じていることが欧州の調査で報告されており[4]、医師もそのことを自覚して患者さんに寄り添っていかなければならない」と締めくくられました。

※1 造血器腫瘍診療ガイドライン2018年版補訂版(日本血液学会)では「DMRが得られて安全にTKI治療が終了できる規準が確立されるまでは、臨床試験以外でTKIを中止すべきではない」、「ただし特別な事情がある場合(妊娠を望む女性や重篤な副作用の合併など)、完全には否定できない急性転化に関する十分な説明同意と定期的な定量PCRによるMRDのモニタリングを行い、MMRを失ったら可及的早急に治療を再開するという条件でTKI中止を考慮しても良い」としています。

小野 孝明先生

小野 孝明先生

初発のCMLの治療目標

初発のCMLの治療目標(3カ月後)

BCR-ABL1 ISを測定して、評価する。イメージ

Leukemia. 2020 Apr;34(4):966-84.
造血器腫瘍診療ガイドライン2018年版補訂版
4 慢性骨髄性白血病 表3-1から小野孝明先生作成

グラフ:BCR-ABL1 IS 10%以下を目指す

Leukemia. 2012 Sep;26(9):2096-102.から小野孝明先生作成
Leukemia. 2020 Apr;34(4):966-84.

初発のCMLの治療目標(12カ月以降)

BCR-ABL1 ISを測定して、評価する。イメージ

Leukemia. 2020 Apr;34(4):966-84.
造血器腫瘍診療ガイドライン2018年版補訂版
4 慢性骨髄性白血病表3-1から小野孝明先生作成

グラフ:BCR-ABL1 IS 0.1%以下を目指す

N Engl J Med. 2017 Mar 9;376(10):917-27.から小野孝明先生作成

造血器腫瘍診療ガイドライン2018年版補訂版(日本血液学会)では「DMRが得られて安全にTKI治療が終了できる規準が確立されるまでは、臨床試験以外でTKIを中止すべきではない。ただし特別な事情がある場合(妊娠を望む女性や重篤な副作用の合併など)、完全には否定できない急性転化に関する十分な説明同意と定期的な定量PCRによるMRDのモニタリングを行い、MMRを失ったら可及的早急に治療を再開するという条件でTKI中止を考慮しても良い。」とされている。

講演2 CMLになって気づいた大切なもの
~自分を支えてくれる方々とのつながり~

小林 竜太郎氏
(慢性骨髄性白血病(CML)患者・家族の会「いずみの会」 副代表)

小林氏は、目の調子が悪く眼科で血液検査を受けたところ白血球が多いということで、すぐに紹介された血液内科で骨髄検査を受け、CMLと診断され、そのまま即入院することになったとのことです。
治療を始めたころ、「最初の薬が副作用で飲めなくなったことや薬の効果が思うように出なかったことに悩んでおり、また自分から主治医に質問することはかなり勇気のいることだった」と小林氏は振り返られました。そんな中、自分の受ける検査について繰り返し主治医に確認したことがきっかけで、主治医とのコミュニケーションの機会をもち、主治医と次第に信頼関係を築いていかれたとのことでした。主治医との対話を通じ、医師との対話においてインターネットの情報などに惑わされない大切さを感じたとのことです。小林氏はメモを用いた主治医と相談するコツも紹介くださいました。そして、「CML患者さんは自分の周りには多くないけれども、家族、友人、職場、学校、地域の人々に支えられており、相談できるところは気がつかないだけでいろいろあるかもしれないので、一人で悩みを抱えないでほしい」とお話しになりました。
最後に、「自分らしく“活きる”ために、辛いときには周りに相談し、自分の経験がめぐりめぐって他の誰かのためになるかもしれないと思って、医療関係者や周りの人と話をしてみてはいかがでしょうか」と締めくくられました。

小林 竜太郎氏

小林 竜太郎氏

クロストーク

患者さんと医師のコミュニケーションを考える

テーマ1:患者さんと主治医とのコミュニケーション

このセッションでは、患者さんと主治医がお互いに理解しあうことが信頼関係を築くために非常に大事であることが示されました。そのために、患者さんと主治医で目標を共有すること、お互いに積極的にコミュニケーションをとっていく姿勢をもつことの大切さが共有されました。

患者さんが今の治療で困っていること

小林氏より、主治医に副作用に関することをどこまで主治医に相談してよいか困るというご意見がありました。それに対し小野先生からは、「医師として、患者さんが困っていることを念頭に置き、副作用についてわかりやすく説明し、患者さんが辛さを具体的に伝えやすく質問することが大切である」というご見解を示されました。木崎先生より「副作用は、医師のほうがどうしても軽く考えてしまいがちなので、注意していかなければならない」とご意見を述べられました。

患者さんが聞きたいことを切り出すこと

「医師から一度説明を受けたことを、再度質問するのに抵抗がある」という患者さんの悩みに対し、木崎先生より「医師は説明したつもりでも、患者さんにとっては難しくて理解しづらい、というギャップがある」というご指摘が出ました。小野先生は、「たとえばIS値を『医師との共通の治療目標数値』として患者さんに理解しやすい形で示すなど、ポイントを絞って説明することで患者さんの理解を深められるのではないか」とご提案がありました。

テーマ2:CMLの診療について

このセッションでは、最近話題となっているCMLの遠隔診療やCMLで通院している以外の病院への受診に関して意見が交換されました。

CMLの遠隔診療

小野先生からは「治療開始直後は副作用の問題があるので頻繁に通院する必要があるが、状態が安定している場合は通院頻度を調整できる可能性がある」とのお話がありました。小林氏は、「特に高齢の患者さんは遠方への通院に困難を感じることが多いので、遠隔診療を含めたさまざまな可能性に期待したい」とお話しされました。

CMLで通院している病院以外の受診

小野先生より、「TKI投与開始直後や治療が落ち着いていない場合は主治医に、症状が落ち着いていれば、風邪などの症状なら近所の医療機関を受診するとよい」というアドバイスがありました。また、「薬の飲み合わせによってはTKIの効果が減弱したり副作用が出やすくなったりする(※2)ので、かかりつけ医を受診する際には、必ずTKI治療中であることを伝えるように」という注意点も示されました。

※2 薬の飲み合わせについては服用中の薬剤の添付文書をご参照のうえ、医師にご相談ください。

テーマ3:患者さんの周りの方(ご家族・ご友人・職場の方など)からの支え

小林氏から「患者も社会で活躍したいという思いをもっているので、体調がよさそうなときは周りの方に普通に接してもらいたい」との意見が出されました。また、「がん患者さんが生きやすい社会を作るために、CMLへの理解を深めてもらえるよう、勇気をもって病気のことを伝えていってほしい」と患者さんへのメッセージを伝えられました。小野先生より、「TKIを服薬しながらそれまでと同様の生活を送る方がほとんどのため、周りの方に病気について理解してもらい、治療を続けながら日常生活を幸せに送っていただきたい」というお言葉もありました。

諸外国ではそのような報告もあるようですが日本では報告がなく、人種差もあるため、今後データの収集が必要です。しかし一番大切なのは、がんを恐れてTKIの服用をやめてしまわないことです。TKIでCMLを抑える恩恵の方が大きいので、他のがんのこともケアしながら、治療を継続することが望ましいでしょう。

小野 孝明先生

小野先生

私自身はCMLになる前はそれほど積極的ではなかったのですが、合併症や副作用の観点から、CML患者にとって定期的な健康診断を受けることが大事であるという認識に変わり、現在ではしっかり受けるようにしています。

小林 竜太郎氏

小林氏

TKIを中止(※1)できても、「もう診察に来なくていい」と言えるかというと、答えはノーです。中止後6か月間は1か月ごと、それから1年間は2か月ごと、それ以降も少なくとも3か月ごとに必ず受診してIS値をチェックする必要があります。

※1 造血器腫瘍診療ガイドライン2018年版補訂版(日本血液学会)では「DMRが得られて安全にTKI治療が終了できる規準が確立されるまでは、臨床試験以外でTKIを中止すべきではない」、「ただし特別な事情がある場合(妊娠を望む女性や重篤な副作用の合併など)、完全には否定できない急性転化に関する十分な説明同意と定期的な定量PCRによるMRDのモニタリングを行い、MMRを失ったら可及的早急に治療を再開するという条件でTKI中止を考慮しても良い」としています。

小野 孝明先生

小野先生

まとめ

  • 患者さんが自分らしくイキイキと活きるために、主治医と患者さんがお互いに理解し合い、患者さんの希望にそった治療目標を共有することが大切です。
  • 主治医が忙しそうだとコミュニケーションのきっかけをつかみづらいかもしれませんが、ご自身のために患者さん自ら主治医に積極的にコミュニケーションをとってみることも大事です。
  • 主治医と患者さんとの相互理解が深まるようなコミュニケーションにつなげる方法として、主治医は患者さんにわかり易い説明を心がけること、患者さんは日頃から主治医に相談したいことをメモしておき診察時に症状をできるだけ具体的に説明すること、があげられます。
  • 患者さんの周りにはご家族やご友人といったいろいろな方の支えがあります。インターネット等の情報に頼って不安になったりする場合は一人で悩まず、周りの方に勇気を出して相談してみてください。今まで気づかなかった相談先が見つかるかもしれません。
  1. Tariq IM, et al. Haematologica. 2016;101(5):541

  2. Hanfstein, B et al. Leukemia. 2012;26(9):2096

  3. Andreas H, et al. N Engl J Med. 2017;376(10):917

  4. Giora S, et al. Leukemia. 2020;34(8):2102