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慢性骨髄性白血病(CML)の情報サイト

2019年9月3日に「Webで参加するCML市民公開講座:CML(慢性骨髄性白血病)になっても自分らしく心豊かに過ごすには」を開催しました。CML治療を継続しながら心豊かに生きていくためのポイントについて、患者力アップの観点から紹介しています。ぜひご覧ください。

開催:2019年9月3日(火)

2019年9月3日(火)、Webで参加するCML市民公開講座「CMLになっても自分らしく心豊かに過ごすには」を開催いたしました。はじめに、坂下 千瑞子先生(リレー・フォー・ライフ御茶ノ水、東京医科歯科大学医学部附属病院)に、「がんを体験した血液内科医の私に今できること」と題して、患者力アップのコツについてご講演いただきました。続いて、木崎 昌弘先生(埼玉医科大学総合医療センター)、坂下 千瑞子先生、田村 英人氏(CML患者・家族の会「いずみの会」)の3名で、「CML患者の悩み、どうすればいいの?」をテーマにパネル討論を行いました。

講演:がんを体験した血液内科医の私に今できること

坂下 千瑞子 先生
リレー・フォー・ライフ御茶ノ水 名誉実行委員長 東京医科歯科大学医学部附属病院 血液内科 特任助教

坂下先生のご講演では、「病と一生向き合い、治していくのは患者自身の力(患者力)」であると、自らの生きる力を最大限に発揮することの大切さについてご自身ががん患者になった経験を交えてお話しいただきました。
坂下先生は、勇気・笑顔・仲間・希望・知恵を持てば患者力がアップするのではないかと考えたことから、世界最大級のがん征圧のためのチャリティー活動である「リレー・フォー・ライフ」に参加するようになったそうで、「どう生きたいかを決めるのは自分」、「命の最高責任者としての自覚を持って生き、自分自身の可能性を大いに信じて、命を輝かせるためにいろいろ試して覚えておくことが大切である」と強調されました。
現在、厚生労働省が掲げるがん対策の全体目標は、「がん患者を含めた国民が、がんを知り、がんの克服を目指す」とされており、患者自身が動き出す時代になってきています。坂下先生は患者力をアップするコツについて説明し、「がん患者さんの交流会は、体験談や想いを共有してお互いに励まし合い、勇気と希望と笑顔があふれる場所ですので、積極的に参加していただきたい」と呼びかけられました。
坂下先生は、「私自身は、患者さんの想いを受け止める場所をつくり、その人らしく生きられる社会を目指したい。また、新薬の開発に向けて資金を集め、さまざまな場面で患者さんの想いを伝えていきたい」と語られ、「この時代を共に生きる仲間として、希望あふれる未来への大きな一歩を皆様と一緒に歩みたいです」とご講演を締めくくられました。

坂下 千瑞子 先生

※厚生労働省:がん対策推進基本計画(第3期)<平成30年3月9日 閣議決定>
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000183313.html

患者力をアップするコツ

  • 少し先とずっと先の目標をつくる
  • 自分の新たな役割を探す
  • 仲間と繋がる
  • 生きることを楽しむ

パネル討論:CML患者の悩み、どうすればいいの?

木崎 昌弘 先生

司会:木崎 昌弘 先生

一般社団法人 日本血液学会 理事
埼玉医科大学総合医療センター 血液内科 教授

坂下 千瑞子 先生

パネリスト:坂下 千瑞子 先生

リレー・フォー・ライフ御茶ノ水 名誉実行委員長
東京医科歯科大学医学部附属病院 血液内科 特任助教

田村 英人 氏

パネリスト:田村 英人 氏

CML患者・家族の会「いずみの会」代表

43%の患者さんは主治医に十分に相談できないため悩んでいる

「主治医の先生に聞きたいことがあれば遠慮なく質問できる」という質問に対し、本講座にご参加の方々にご回答いただいたところ、「できる」:58%、「少しはできる」:36%、「できない」:7%という結果でした(総回答数:102名)。
田村氏は、「先生との関係性にかかわらず、『申し訳ない』、『質問する雰囲気ではない』と感じて質問できずにいる患者さんは多くいらっしゃいます。医療者は『cure(治癒)』を目指しますが、患者は『care(ケア)』を欲しています」と語られました。木崎先生は、「いつも患者さんの目をみてお話しすることを心がけています。患者さんと医療者が互いを尊重し、何でも話せる関係性をつくることが、良い治療を行う上で欠かせないと思います」とお話しされました。

TKI服薬中止の導入が可能となるタイミングまでは治療をしっかりと継続していただきたい

CML治療は薬剤が高価であり長期にわたるため、高額療養費制度を利用しても経済的に苦しいという悩みに対して、相談支援センターや主治医などに相談する、限度額適用認定証などを活用するといった意見が出ました。
また、「いつか治療は中止できるの?」という質問に対して、坂下先生は、造血器腫瘍診療ガイドライン2018年版において、「DMRが得られて安全にTKI治療が終了できる基準が確立されるまでは、臨床試験以外でTKIを中止すべきではない。」、「ただし特別な事情がある場合(妊娠を望む女性や重篤な副作用の合併など)、完全には否定できない急性転化に関する十分な説明同意と毎月の定量PCRによるMRDのモニタリングを行うという条件でTKI中止を考慮しても良い。」と記載されていることを説明されました[1]。続けて、服薬率が90%より高い場合には分子遺伝学的奏効達成率が高く、90%以下になると同達成率が低下するという報告があることを示し[2]、「今後、チロシンキナーゼ阻害薬(TKI)の服薬中止の明確な基準が確立され、実際に服薬中止を導入できるタイミングがくるまでは、90%以上の服薬率を目指して治療を継続してほしいです。そして、TKI服薬中止を導入できた場合には、定期的なモニタリング検査をしっかりと受けていただくことが大切です」と呼びかけられました。

検査値の意味や起こりうる副作用について理解しておくことは大切

「検査値の意味がわからないが、主治医に質問しにくい」、「自身が感じる不調が副作用なのかどうかがわからない」という悩みが多くあることから、CML治療の4つのステップMR4.5などの意味、起こりうる副作用について坂下先生にわかりやすくご説明いただきました。「気になる症状がある場合は、まず主治医に相談していただきたいです。特に心配なのは、血管がつまってしまう副作用です」と述べられ、糖尿病や高血圧、脂質異常症などの基礎疾患のコントロールや禁煙が重要であることを強調されました。木崎先生は、検査値をご自身の現状や治療結果として理解しておくことは重要であり、主治医への繰り返しの質問や患者さんご自身による勉強の大切さについて語られました。田村氏は「患者さん同士で情報交換をして、検査方法や数値の見方を知ることも大事だと思います」と続け、副作用に関しては「主治医に伝えたい内容は事前に紙に書いておく」、「自分で言いにくいことは家族から話してもらう」などの患者さんご自身でできる工夫について紹介されました。

Q. 妊娠中にCMLが発覚しました。出産について気をつけたほうがよいことはありますか?また、子どもに遺伝することは絶対にないのでしょうか?

妊婦に分子標的治療薬は使用できませんので、一時的にインターフェロンを使う場合もあります。出産に至るまでは慎重に経過観察していただきたいです。子どもに遺伝することはありません。

Q. 現在、地方の小さな病院に月1回通院しています。患者会で都市部の大きな病院への転院を勧められていますが、遠距離になるため悩んでいます。

治療上必要な検査が受けられる病院であること、ご自身のCMLの状態が安定している場合には、通いやすい、話しやすいといった基準で選ぶことが大事だと思います。また、血液専門医のいる病院であれば、地方と都市部で受けられるCMLに対する医療に差はないと思います。日本血液学会のホームページを参考にして、ぜひ血液専門医のいる病院を受診していただきたいと思います。

Q. 9歳の患者です。移植になれば、より成績のよい病院に転院したいと考えています。主治医に対してそのことを伝えても不利益を被らないでしょうか?

セカンドオピニオンを積極的に受けることは問題なく、自分の望む病院で治療を受けることは大事です。「友人が強く勧めるので」などと伝えたり、家族から主治医にセカンドオピニオンを申し出てもらう方法もあります。

Q. CMLのアルゴリズムでは、Warningの際に頻回にモニタリングとなっていますが、具体的な頻度を教えてください。

患者さんの状況によって異なりますが、例えば、遺伝子検査は月に1回、血液検査は2週間に1回など頻回に行う場合があります。

まとめ

  • CML治療を継続しながら心豊かに生きていくためには、患者力をアップすることが大切
  • 患者力をアップするために、ご自身のCMLの状態や検査値、副作用などについての理解を深めること、患者会などを活用し、情報の収集や共有をすることが必要
  • 良い治療を行う上で、患者さんと医療者が互いを尊重し、何でも話せる関係性をつくることが大切
  1. 日本血液学会編, 造血器腫瘍診療ガイドライン2018年版補訂版, 金原出版, 2020, p.113

  2. Marin D, et al. J Clin Oncol. 2010; 28(14): 2381-2388