ホルモンは、内分泌腺や消化管でつくられ、血液によって他の器官や部位に運ばれて、特定の器官の働きを調節する重要な生理活性物質です。そのため、ホルモンの不足や過剰はさまざまな病的状態の原因となります。
NETは、腫瘍から分泌されるホルモンが人体に強い影響を与えて、異常な症状が出る機能性NETと症状のない非機能性NETに分けられます(図)。
機能性NETとは、腫瘍の分泌するホルモンが、低血糖や消化性潰瘍発生などの特異的症状を引き起こし患者さんを悩ませるNETのことです。 産生されるホルモンの種類によって症状が異なります(表)。
非機能性NETは、腫瘍が大きくなって、他の臓器を圧迫したり出血したりする場合には症状を引き起こしますが、その場合には機能性NETとは呼びません。
図:ホルモン症状の有無による分類

表:主な機能性NET
主な症状 | 産生ホルモン | 悪性頻度 (%) |
腫瘍部位 | 患者さんの 男女比や年齢 |
NETの診断 | |
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インスリノーマ | 低血糖(動悸、冷や汗、意識障害、異常行動など) | インスリン | 5〜10 | 膵 | 男:女 2:3 15~60歳 |
インスリノーマが疑われるとき |
ガストリノーマ(ゾリンジャーエリソン症候群) | 消化性潰瘍、逆流性食道炎、脂肪便 | ガストリン | >90 | 膵、十二指腸、胃、腸間膜 | 男:女 3:2 20~50歳 (平均43歳) |
ガストリノーマが疑われるとき |
VIPオーマ | 激しい水様性下痢、低カリウム血症 | VIP、PHI | 75 | 膵、十二指腸 | やや女性が多い 20~80歳 (平均48歳) |
VIPオーマが疑われるとき |
グルカゴノーマ | 融解性移動性紅斑、糖尿病、体重減少、貧血 | グルカゴン | 50 | 膵 | やや女性が多い 40~60歳 |
グルカゴノーマが疑われるとき |
セロトニン産生腫瘍(カルチノイド症候群) | 肝転移後に、皮膚の潮紅、下痢、心疾患、気管支収縮 | セロトニンなど | 100 | 全消化管、呼吸器、胸腺、膵 | 男:女 2:1 30~70歳 |
カルチノイド腫瘍が疑われるとき |
ソマトスタチノーマ | 糖尿病、脂肪便、胆石 | ソマトスタチン | 50 | 膵、十二指腸 | 男:女 1:2 25~70歳 (平均50歳) |
ソマトスタチノーマが疑われるとき |
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Surgical endocrinology: Doherty GM, Skogseid B, eds. Philadelphia, PA: Lippincott Williams & Wilkins; 2001より改変