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前立腺がん疾患情報サイト

監修:
久米 春喜 教授
(東京大学医学部泌尿器科学教室)

前立腺がんの治療では、男性ホルモン(アンドロゲン)の働きを抑えるホルモン療法が中心的に行われます。しかし、ホルモン療法を続けていてもがんが進行し、さらに他の臓器や骨などに転移がみられる状態になることがあります。この状態を「転移性去勢抵抗性前立腺がん(mCRPC)」と呼びます。
ここでは、mCRPCに対して行われる治療法についてご紹介します。

転移性去勢抵抗性前立腺がん(mCRPC)とは?

男性ホルモンが十分に抑えられている状態でもがんが進行し、他の部位に転移している状態

前立腺がんの発生や進行には、男性ホルモン(アンドロゲン)が関係しています。そのため、ホルモン療法(内科的去勢)によって男性ホルモンの分泌や働きを抑えることで、前立腺がんの進行を防ぐ治療が行われます。

しかし、ホルモン療法(内科的去勢)を続けていても、男性ホルモンが十分に抑えられているにもかかわらず、がんが進行してしまうことがあります。このような状態の前立腺がんを「去勢抵抗性前立腺がん(CRPC)」と呼びます。

さらに、がんが骨やリンパ節など前立腺の外に転移している場合は、「転移性去勢抵抗性前立腺がん(mCRPC)」と診断されます。mCRPCは、ホルモン療法が反応しづらくなった状態ではありますが、治療の選択肢は近年、広がっています。

【図】ホルモン療法への反応性に応じた転移性前立腺がんの分類

画像:ホルモン療法への反応性に応じた転移性前立腺がんの分類

※上図では、転移性前立腺がんをホルモン療法への反応性に基づいて「mCSPC」「mCRPC」に分類しています。

治療の考え方と基本方針

「ホルモン療法(内科的去勢)」を継続し、他の薬剤や治療を併用する

mCRPCの治療では、がんの進行を抑えるとともに、ご本人の生活の質を維持・向上させることが大きな目標となります。男性ホルモンの働きを抑える「ホルモン療法(内科的去勢)」は引き続き継続しつつ、より強力にがんの進行を抑える薬剤や治療法を追加していくのが基本的な考え方です。

主な治療法

mCRPCで用いられる主な治療法の一覧をご紹介します【表】。

【表】 mCRPCで用いられる主な治療法

①新規ホルモン薬男性ホルモンの働きを阻害し、がん細胞の増殖を抑える方法
②化学療法がん細胞の増殖を抑える薬剤を点滴などで投与する方法
③核医学治療放射線を出す薬剤を投与し、がん細胞など特定の標的に集め、体の内側から放射線で病気を攻撃する治療法
④PARP阻害薬がん細胞のDNA修復に関わる酵素の働きを阻害する薬剤を用いた治療
⑤その他個々の状態で適応が検討される免疫療法など

①新規ホルモン薬

前立腺がんは睾丸や副腎から分泌される男性ホルモン(アンドロゲン)による刺激で進行する性質があります。新規ホルモン薬は男性ホルモンの受容体やその作用経路をブロックするタイプのホルモン薬です。

②化学療法

がん細胞の分裂や増殖を抑える薬剤を点滴で投与します。患者さんの体力や他の病気の状況を考慮して、適切な時期に使用されます。

化学療法で使われる主な薬剤は、細胞分裂に必要な微小管の機能を阻害することでがん細胞の増殖を抑制する、タキサン系抗がん剤です。

③核医学治療

放射線を出す特殊な薬剤を体内に投与し、がんなど特定の病巣に集めて内側からがん細胞を破壊する治療法です。

前立腺がんは骨に転移しやすい性質を持つため、この治療法が骨転移に対して用いられることがあります。骨の成分に似た性質を持つ薬剤(ラジウム)が転移部分に集まり、そこから放出される放射線でがん細胞を破壊します。

また、骨だけではなく他の臓器にある転移がんへも用いられる、放射性リガンド療法(RLT)という治療法もあります。治療の適応は、特定の抗原の発現を確認する検査(PSMA-PET検査)を行い判断されます。

④PARP阻害薬

PARP阻害薬とは、がん細胞のDNA修復にかかわる酵素・PARPの働きを妨げる薬剤で、投与することでがん細胞の増殖を抑える働きをもちます。特定の遺伝子変異がある場合にのみ効果が期待されるため、あらかじめ検査を行い治療が有効かどうかを確認する必要があります。

⑤その他

患者さんのこれまでの治療歴や特定の遺伝子変異など、個々の状態に応じて免疫療法などが検討されることもあります。
免疫療法では、がん細胞に対する免疫の攻撃を強める免疫チェックポイント阻害薬が使用されます。

治療にあたって大切なこと

納得できる治療法を話し合うことが重要です

mCRPCに対する治療は、ここ数年で大きく進歩しています。治療選択肢は広がり、希望をもって治療に向き合える時代になっています。

ご自身の状態や治療歴、生活の希望を主治医と共有しながら、納得できる治療法を一緒に探していきましょう。ひとつの治療が終わっても、次の選択肢があります。落ち着いて、希望をもって治療を続けていくことが大切です。

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