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前立腺がん疾患情報サイト

監修:
久米 春喜 教授
(東京大学医学部泌尿器科学教室)

「転移の可能性」を告げられると、不安を感じるのは自然なことです。しかし、今日のがん検査技術は大きく進歩しており、早めに検査を受けて適切な対応をとることで、自分に合った治療法を選びやすくなっています。不安なことや疑問があれば、ひとりで抱え込まず、遠慮なく主治医に相談してください。
ここでは、前立腺がんの転移が疑われた場合に行われる主な検査についてご紹介します。

転移が疑われる場合とは?

症状や検査結果の変化から転移が疑われます

前立腺がんは、進行すると他の臓器へ転移しやすいがんのひとつです。これは、前立腺がリンパ管や血管が豊富な場所にあり、がん細胞が血液やリンパの流れに乗って全身に広がりやすいためです。特に骨への転移が多く、腰や背中の痛みといった症状が現れることがあります。次のようなケースでは、転移の可能性が疑われます。

1. PSA値が高い・急激に上昇している場合

PSA(前立腺特異抗原)は、前立腺がんの進行や再発を示す重要な指標です。数値が高い、あるいは短期間で急激に上昇している場合、転移の可能性があります。

2. 画像検査で異常が見つかった場合

CT検査、全身MRI検査(DWIBS)、骨シンチグラフィー、FDG-PET検査などの画像検査で、リンパ節、骨、肺、肝臓などへの異常な影が見つかると、転移の疑いが生じます。

3. 病理検査で高リスクと判定された場合

グリソンスコアが高い(例:8〜10)、PSA値が高い(20ng/mL以上)、あるいはがんが前立腺の被膜を越えて広がっている(病期T3以上)場合は、転移している可能性が高くなります。

4. 自覚症状が現れた場合

初期の前立腺がんは無症状のことが多いですが、転移があると、「腰や背中の痛み」「脚のしびれやむくみ」などの症状が現れることがあります。

転移が疑われる場合の主な検査法

転移の有無を調べるには、血液検査や画像検査などを組み合わせて、がんがどこまで広がっているかを詳しく確認します。検査はそれぞれに特徴があり、目的やご本人の状態に応じて使い分けられます。

以下に代表的な検査法をご紹介します【表】。

【表】 前立腺がんの転移を調べる検査法

<血液検査>
・PSA検査
転移の可能性を血液から調べる基本的な検査
<画像検査>
・CT検査
・MRI検査
転移の有無を画像で確認する検査
<核医学検査>
・骨シンチグラフィー検査
・PET検査
転移を放射性薬剤で調べる検査
<遺伝子検査>
・遺伝子パネル検査
・生殖細胞系列遺伝子検査
遺伝子の特徴から、効果的な治療を選ぶために行われる検査

血液検査

転移の可能性を血液から調べる基本的な検査です。

PSA検査

血液中のPSA(前立腺特異抗原)の値を測定します。PSAは、前立腺が産生するタンパク質で、がんの有無や進行の度合いを知るための重要な指標です。ただし、炎症や加齢でも値が上昇することがあるため、単独で転移の有無を判断することはできません。治療効果の判定や再発の早期発見にも活用されます。

画像検査

CT検査

X線を利用して体内の断面画像を撮影する検査です。​リンパ節や骨、肝臓、肺などへの転移の有無を調べます。検査時間が短く、がんの広がりを効率よく把握できるため、進行例や再発時の評価によく使われます。

MRI検査

磁場と電磁波を利用して体内の臓器や組織の詳細な画像を撮影する検査です。前立腺がんの存在や広がりの確認、病期の判定に用いられます。全身MRI(DWIBS)は、磁場と電磁波を利用して撮影する画像検査で、前立腺周囲への浸潤や骨盤内の転移を詳しく確認できます。骨盤内リンパ節や脊椎などへの転移の有無も評価でき、治療方針を立てるうえで重要です。

核医学検査

がんが骨やほかの場所に転移していないかを、放射性薬剤を使って調べる検査です。

骨シンチグラフィー検査

放射性物質を注射し、それが骨に集まる様子を画像化する核医学検査です。骨への転移を早期に捉えることができ、小さな転移も検出しやすいため、前立腺がんの骨転移評価に広く用いられています。

PET検査

放射性薬剤を用いて、がんの有無や広がり、転移などを画像化する検査法です。ブドウ糖に似た性質を持つ薬剤を用いるFDG-PET検査と、前立腺がんに多く見られるPSMAというタンパク質に結合する薬剤を用いて高感度にがんを検出するPSMA-PET検査があります。
※PSMA-PET検査は、特定の治療の適応判断など保険適用に条件が設けられている場合がある為、詳しくは主治医へお尋ねください

遺伝子検査

遺伝子の特徴から、がんの性質、遺伝的なリスク、治療薬との相性などを明らかにする検査です。一人ひとりに合った最適な治療を選ぶ「個別化医療(プレシジョン・メディシン)」に役立てられます。

遺伝子パネル検査

がん細胞や血液中から、多数の遺伝子変異を同時に調べる検査です。検査を受けられるのは、厚生労働省が指定した一部の施設に限られます。

生殖細胞系列遺伝子検査

血液や唾液を使って、生まれつき持っている遺伝子配列の違いを調べる検査です。ご自身や血縁者のがんになりやすい体質(遺伝的リスク)を評価するのに役立ちます。
※生殖細胞系列遺伝子検査は、特定の治療の適応判断など保険適用に条件が設けられている場合がある為、詳しくは主治医へお尋ねください

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