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前立腺がん疾患情報サイト

監修:
久米 春喜 教授
(東京大学医学部泌尿器科学教室)

​前立腺がんの診断には、問診や尿検査、血液によるPSA検査、直腸診、前立腺生検など、段階的に複数の検査を行う必要があります。
また、がんの進行度や転移の有無を調べるために、画像検査も活用されます。ここでは、診断や治療方針の決定に役立つ主な検査方法をご紹介します。

前立腺がんの検査の流れ

早期発見と、治療選択・経過把握のために

前立腺がんは、早期に見つけて適切に対応すれば根治が期待できるがんのひとつです。しかし、自覚症状があらわれにくいため、早期発見のためには定期的な検査が重要です。

検査や診断は、以下のような段階で行われます。
①スクリーニング検査(がんの可能性を調べる)
②確定診断(がんかどうかを診断する)
③病期診断(がんの進行度や広がりを把握する)

これらの検査は、治療方針を決めるために欠かせません。さらに治療中や治療後にも、治療効果の確認や治療の適応判断、再発の兆候を把握する目的で、その他の検査(PSMA-PET検査や遺伝子パネル検査)などの追加されることがあります。
以下に代表的な検査法をご紹介します【表】。

【表】 前立腺がんの主な検査法

問診・尿の検査症状や病歴、家族歴、泌尿器の状態を把握するための基本的な情報の収集
PSA検査血中のPSA値を測定し、前立腺がんの可能性を早期に察知
直腸診触診により前立腺の硬さやしこりなどの異常を確認
前立腺生検確定診断のため、前立腺の組織を採取し、がん細胞の有無を確認
超音波検査前立腺の形や大きさを評価
MRI検査前立腺内のがんの位置や広がりを評価
CT検査臓器やリンパ節の転移の有無を画像で確認
核医学検査転移しているかどうかを可視化し、がんの有無や広がり、他臓器への転移を評価
遺伝子検査治療薬の選択に役立つ遺伝子異常を確認

前立腺がんの主な検査法

問診

排尿や性機能の状況、既往歴や家族歴などについて医師が確認します。

特に、ご家族に前立腺がんや卵巣がん、乳がん、膵臓がんの方がいる場合は、遺伝的リスク評価のために必ず申告してください。

尿の検査

尿の色やにごり、尿タンパク・血尿の有無から泌尿器系の異常の兆候を調べます。

PSA検査

血液中のPSA(前立腺特異抗原)の値を測定します。PSAは、前立腺が産生するタンパク質で、前立腺がん以外にも炎症や肥大でも上昇することがあるため、他の検査と組み合わせて総合的に判断します。治療中・治療後も経過観察の指標として用いられます。PSA値は年齢とともに上昇するため、年齢ごとに基準値が決められています【図1】。

また、PSA値は前立腺がんと診断された後も、治療効果の確認や再発の早期発見のために定期的に測定されます。

【図1】 PSA基準値(年齢別)

画像:PSA基準値(年齢別)50〜64歳:3.0ng/mL以下、65〜69歳:3.5ng/mL以下、70歳以上:4.0ng/mL以下、基準値を超える場合は、その他のスクリーニング検査や前立腺生検を実施

日本泌尿器科学会 編:前立腺がん検診ガイドライン 2018年版, メディカルレビュー社, 2018 

直腸診

医師が肛門に指を入れ、前立腺の大きさ、硬さ、しこりの有無などを評価します。

前立腺生検

肛門から超音波プローブ(器具)を挿入し、前立腺の位置を確認しながら、細い針で前立腺から複数箇所の組織を採取し、がん細胞の有無を顕微鏡で確認します【図2】。確定診断に不可欠な検査です。

【図2】 前立腺生検

画像:前立腺生検

超音波(エコー)検査

肛門から細いプローブ(器具)を挿入し、前立腺の大きさや内部構造、しこりの有無を確認します。

MRI検査

磁場と電磁波を利用して体内を撮影する画像検査です。前立腺がんの存在や広がりの確認、病期の判定に用いられます。​

MRI検査の中でも、マルチパラメトリックMRI(mpMRI)は、複数の画像情報をもとにがんの位置や広がりを高い精度で評価し、​狙いを定めた生検を可能にすることで体の負担軽減に繋がります。全身MRI(DWIBS)は、がんが体のどこかに広がっていないかを一度に​調べる検査で、リンパ節や骨への転移の有無を確認するのに役立ちます。​

CT検査

X線を利用して体内の断面画像を撮影する検査です。​リンパ節や骨、肝臓、肺などへの転移の有無を調べます。検査時間が短く、がんの広がりを効率よく把握できるため、進行例や再発時の評価によく使われます。

核医学検査

核医学検査は、微量の放射性物質を体内に投与し、そこから放出される放射線を専用のカメラで撮影することで、体内のがんの有無や広がりを調べる検査です。

前立腺がんは骨に転移しやすい性質を持つため、骨の代謝が活発な部位に集まる特徴をもつ薬剤を使用した骨シンチグラフィーや、がん細胞が取り込むブドウ糖に似た性質を持つ薬剤を使用したFDG-PET検査などが行われます。

遺伝子検査

がん細胞や血液から、遺伝子の変化を調べる検査です。がんの遺伝⼦の変化を明らかにすることで、効果が期待できる治療薬の選択に役⽴ちます。特定の遺伝子だけを調べる検査と、多数の遺伝子の変異や特徴を同時に調べる検査があります。こうした検査は、一人ひとりに合った最適な治療を選ぶ「個別化医療(プレシジョン・メディシン)」にも役立てられます。

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