前立腺がんの治療は、ご本人だけでなくご家族にとっても大きな決断となることがあります。たくさんの情報の中で、迷いや不安を感じることもあるかもしれません。このページでは、そんな時にご家族がどのようにご本人を支え、一緒に最善の選択をしていくか、そのヒントをご紹介します。
ポイント1. 治療方針について「話す」
“納得のいく選択”を支える対話
前立腺がんには多くの治療選択肢があるため、「何を大切にしたいか」「どんな生活を送りたいか」といったご本人の希望に沿った対話が欠かせません。
そこで大切になるのが、「Shared Decision Making(シェアード・ディシジョン・メイキング:SDM)」という考え方です。SDMとは、患者さんやご家族と医療者が、それぞれの考えや情報を共有し、話し合いながら治療方針を決めていくプロセスのことです。
治療法を選ぶ際には、医学的な情報だけでなく、ご本人がどんな人生を大切にしているか、という視点も非常に重要になります。
話し合いのプロセス
話し合いは、一般的に次のような流れで進められます。
①主治医が、病状や治療の選択肢、それぞれのメリット・デメリットをわかりやすく説明します。
②ご本人やご家族は、大切にしたい価値観や生活上の希望、不安などを率直に伝えます。
③お互いに情報を共有しながら、一人ひとりに合った納得のいく治療を一緒に選んでいきます。
話し合いにおけるご家族の役割
特に高齢の方では、「難しいことは先生に任せます」と、判断を委ねてしまう場面もあるかもしれません。そんな時、ご家族がそばにいて一緒に話を聞いたり、必要に応じてご本人の想いや生活背景を代弁したりすることがスムーズな話し合いにつながります。たとえば、以下のような、ご家族ならではの情報は、主治医が治療方針を調整するうえでの大きなヒントになります。
●「日常生活でどのようなことに困っているのか」
●「ご本人が大切にしていること」(仕事・趣味への影響、入院生活への抵抗感 など)
●「過去に不安に感じていたこと」 など
ポイント2. 判断を「支える」
「この選択でいいのかな?」と感じた時のセカンドオピニオン
治療の選択肢が多いと、「どれを選べばいいんだろう」「この選択で本当にいいのかな」と迷いや不安が生まれるのは自然なことです。そんな時には、「セカンドオピニオン」の活用もひとつの方法です。
セカンドオピニオンとは、現在の主治医とは別の医師に意見を聞き、診断や治療方針について多角的に検討する仕組みです。すぐに結論を出そうとせず、さまざまな意見に耳を傾けながら丁寧に検討することで、ご自身が納得できる決断につながります。
多くのがん診療連携拠点病院には「セカンドオピニオン外来」が設けられており、相談を受け付けています。
ポイント3. 専門家に「相談する」
がん相談支援センターという“もうひとつの相談窓口”
「こんなこと相談してもいいのかな」「誰に聞けばいいかわからない」と迷った時は、「がん相談支援センター」をぜひ利用してみてください。ここは、がんに関するさまざまな悩みや疑問を気軽に相談できる公的な窓口です。
全国のがん診療連携拠点病院に設置されており、患者さんだけでなくご家族も無料で利用できます。相談方法は、面談・電話・メールなど複数ありますので、ご自身に合った方法で相談できます。
がんに関する研修を受けた看護師や医療ソーシャルワーカー(MSW)などの専門スタッフが、以下のような幅広い内容に対応しています。
がんと向き合うことは、ご本人はもちろん、ご家族にとっても大きな負担となることがあります。ときには、ご家族の方が心やからだのバランスを崩してしまうこともあるでしょう。だからこそ、ひとりで悩まず、不安なことやわからないことは、どうぞ遠慮なくご相談ください。ご家族が心穏やかに過ごせることは、ご本人にとって何よりの支えになります。