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慢性骨髄性白血病(CML)の情報サイト

CML(慢性骨髄性白血病)とともに生きる

2023年9月23日に「ハイブリッド開催市民公開講座:CML(慢性骨髄性白血病)とともに生きる」を開催しました。
日常生活で病気と上手に付き合っていく方法、治療を続けながらの生活や医師、家族、友人とのコミュニケーションなど「ともに生きる」をテーマに紹介しています。ぜひご覧ください。

開催:2023年9月23日(土)

講演 CMLの今と昔~CMLをもっと話せるように~

渡邉 健 先生 ハレノテラスすこやか内科クリニック 院長

慢性骨髄性白血病(CML)とは

慢性骨髄性白血病は白血病の一種で、10万人に1人の頻度でみられる疾患です。細胞中のBCR遺伝子とABL1遺伝子が何らかの原因でくっついて、フィラデルフィア染色体という異常な染色体ができることで発症します。フィラデルフィア染色体がもつBCR::ABL1融合遺伝子からBCR::ABL1蛋白が作られ、この蛋白の働きによってフィラデルフィア染色体(Ph)をもつ、がん化した白血病細胞が増殖していきます(図1)。ちなみに、もともとの遺伝子は正常なので、フィラデルフィア染色体が遺伝することはありません。
この病気は、ゆるやかな慢性期、移行期を経て、命に関わる急性期に入るため、治療によって慢性期の間に病気をストップさせることが必要です。

図1 慢性骨髄性白血病の原因

フィラデルフィア染色体と白血病細胞の増殖(イメージ図)

慢性骨髄性白血病と向き合う方へ(改訂11版)

CMLの治療の歴史

フィラデルフィア染色体が初めて発見されたのが1960年、フィラデルフィア染色体がBCR遺伝子とABL遺伝子の融合遺伝子をもつことが初めて発見されたのが1983年です[1]ので、この病気の実態が分かってきたのは、わずか40年ほど前のことです。
当初のCMLの治療といえば、同種造血幹細胞移植(注1)以外では、抗がん剤や放射線治療など、症状を抑えて緩和することを目的としたものでした。1980年頃にはようやく病気の本体に迫り長期生存を目指すインターフェロンによる治療が行われるようになりましたが、強い副作用を伴い、継続が難しいという課題がありました。

(注1)同種造血幹細胞移植は、ドナーから提供された血液細胞のもととなる正常な造血幹細胞を移植するもので、急性転化した患者さんなどに対しては、根治のための治療として、現在でも非常に重要な治療として位置付けられています。

チロシンキナーゼ阻害薬(TKI)の登場

そのような中で、2000年代になって分子標的治療薬であるチロシンキナーゼ阻害薬(TKI)が登場したのは実に画期的なことでした。CMLの進行には、BCR::ABL1蛋白が重要な働きを担っています。この蛋白質はポケットのようなものを持っていて、そこにエネルギー(ATP)が注入されるとスイッチが入り、白血病細胞を増やしていくのですが、TKIはこのポケットにくっついてふたをし、エネルギーが入らないようにして白血病細胞の増殖を食い止める薬です(図2)。TKIの登場によって、CMLは「つきあっていける病気」へと変わりました。現在は選択可能な薬剤が複数あり、「より深い寛解、進行抑制」「より副作用なく治療を続けられること」が治療目標となりました。

図2 チロシンキナーゼ阻害薬(TKI)のしくみ

慢性骨髄性白血病に対する分子標的治療薬の作用メカニズム(イメージ図)

慢性骨髄性白血病と向き合う方へ(改訂10版)

分子標的療法はいろいろながんに対しても行われていますが、特にCMLでは高い効果が得られることが知られています。肺がんや大腸がんなどの固形がんは、多数の異常が蓄積して発症するので治療の標的も複数考えられますが、CMLは基本的にBCR::ABL1という遺伝子の異常だけなので、標的が絞りやすく、薬の効果が出やすいのです。

新たな目標 TFR(無治療寛解)について

CMLで、DMR(Deep Molecular Response:深い分子遺伝学的奏功)を2年以上達成できている患者さんでは、薬を中止しても寛解が維持できる場合があります。これをTFR(Treatment-free remission:無治療寛解)と呼んでいます。実際にはTFRに至ったのちに治療の再開が必要となる場合もあります(分子遺伝学的再発)。分子遺伝学的再発時にはTFR前と同様に治療を行うことで再度深い奏効とその維持を目指します。

日本におけるTFRの扱い

国内では2023年版の造血器腫瘍診療ガイドラインにおいて、「DMRが得られた患者の中で一定の条件を満たした場合は、定期的なモニタリングを条件にTKI中止を考慮することができる」と明示されました[2]。まだTKIを終了できる基準は十分には確立されておらず、TKI離脱症候群への懸念もありますが、日本でも治療目標のひとつとして、TFRの選択が示されたことが、これから治療を始める患者さんや現在治療中の患者さんの一定の希望になるのではないかと考えています。

新しい治療の形

CMLの治療法はどんどん進歩し、予後がよくなるとともに、治療の大半が外来でできるようになってきました。今後、外来に通う患者さんが増えることが予測されるなかで、患者さんをしっかりフォローしていくために、日常の診療は地元のクリニックで対応し、必要に応じてまた病院で診る「病診連携」を進めようという動きが広まりつつあります。病診連携を行うことで、地元のかかりつけ医と病院の専門医のダブル主治医制で患者さんを診ることができ、患者さんの通院の負担も軽減できます。私もこうした体制を実現する一助になればと考えて、2019年に勤務医から開業医に転身し、以前よりも患者さんと密にコミュニケーションがとれているのではないかと手応えを感じているところです。CMLの患者さんが身近な場所で、負担の少ない形で治療を受けられる時代に入ってきているように思います。

  1. 朝長万左男. 日内会誌 創立100周年記念号 2002; 91(7): 136-140

  2. 日本血液学会編. 造血器腫瘍診療ガイドライン2023年版 第3版. 金原出版, 東京, pp.100, 2023