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乳がんの情報サイト

監修:
聖路加国際病院 乳腺外科部長・ブレストセンター長
山内 英子 先生

Q1. 母は高齢で体調もよくないため、通院に付き添いたいのですが、仕事でなかなか休みがとれません。家族のための社会保障制度は何かありますか。

Q2. 自営のために仕事が休めず、高齢の母の通院に付き添えません。何かよい方法はありますか。

Q3. 母が乳がんの手術後、体力が低下して独りで生活するのが難しくなったので、介護保険サービスを利用したいと思っています。手続きはどうすればよいですか。さらに毎月の費用はどのくらいかかるのでしょうか。

Q4. 母は高齢なので定期的に通院するのが大変です。入院して抗がん剤治療(化学療法)を受けられますか。

Q5. ホルモン療法とは、どのような治療法ですか。

Q6. 補整下着やかつら、帽子はどこで買えますか。

Q7. 化学療法とは、どのような治療法ですか。

Q8. 口内炎などのために、食事が十分に摂れなくなりました。食べさせたいのですが、どうすればよいでしょうか。

Q9. 放射線療法とは、どのような治療法ですか。

Q10. 術後にがんの取り残しが見つかりました。もう一度、手術をしなければなりませんか。

Q11. 既往症のために予定の治療ができないといわれました。どうすればよいでしょうか。

Q12. 外来化学療法を受けています。「具合が悪いときは電話してください」といわれていますが、どのような症状になったときに連絡すればよいのでしょうか。

Q13. 強い副作用を伴う抗がん剤は体に悪いと聞きました。化学療法を受けないほうがよいですか。

Q14. 医師に副作用を訴えたのですが、うまく伝わりません。どうすればよいでしょうか。

Q15. 家族が通院に付き添ったほうがよいでしょうか。

Q16. 医療費(手術・放射線治療・薬物療法)の他に、ウィッグや下着、病院までの交通費などいろいろと費用がかさみます。負担を軽くする制度などはありますか?

Q17. 治療のため仕事を休職することにしました。休職期間中の医療費・生活費が心配なのですが、利用できる制度は何かありますか?

Q18. 副作用がつらく、日常生活も困ることがあります。今の仕事は体力的にもきついため、退職して治療に専念する予定です。収入がなくなってしまいますが、利用できる制度はありますか?

Q1. 母は高齢で体調もよくないため、通院に付き添いたいのですが、仕事でなかなか休みがとれません。家族のための社会保障制度は何かありますか。

育児・介護休業法には、通院の付き添いなど介護が必要な日だけ休める「介護休暇制度」があります。勤務する会社ではどのような制度が利用できるのかを人事担当者に確認してみましょう。

育児・介護休業法では、働く人が介護と仕事を両立できるようにいろいろな制度が設けられています。そのうち、通院の付き添いなど介護が必要な日だけ休める制度に「介護休暇制度」があります。これは、要介護状態にある家族の介護をしている従業員は、対象となる家族が要介護状態に至るごとに1回、通算93日まで休暇を取得することができるというものです。

企業によっては対象となる家族の範囲を広げたり、取得できる日数を増やしたり、介護休暇制度を充実させているところもあるようですが、従業員100人以下の企業は2012年6月30日まで義務化が猶予されていますので、介護休暇制度がない場合もあります。この制度は、ある一定の条件を満たしている期間雇用者(同一の事業主に1年以上雇用されているなど)も利用できます。

このほか、企業には介護のために「時間外労働」や「深夜業」を制限する制度、また「短時間勤務制度」(介護のために所定の労働時間の短縮を図る)などを設けることが法律によって定められていますので、勤務する会社ではどのような制度が利用できるのかを人事担当者に確認してみましょう。また、家族の介護をしながら仕事を続けることを理解してもらえるように上司や同僚にも相談したいものです。

なお、育児・介護休業法による制度を利用した際に起こったトラブル(パートタイム従業員になるように強要された、給料を減額されたなど)についての相談は、各都道府県の労働局雇用均等室で受け付けています。

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育児・介護休業法による制度について知りたいのなら
厚生労働省・財団法人21世紀職業財団「両立支援のひろば/働く方々へ」

雇用均等室の所在について知りたいのなら
厚生労働省「労働局雇用均等室」

Q2. 自営のために仕事が休めず、高齢の母の通院に付き添えません。何かよい方法はありますか。

高齢者の場合は、病院への送迎サービスやホームヘルパーの付き添いなどの介護保険サービスを利用する方法があります。通院に関して困ったことがあれば、メディカル・ソーシャルワーカー(MSW)に相談しましょう。

65歳以上の高齢者の場合は介護保険サービスを利用できるため、まず介護保険の申請を行い、要介護認定を受けましょう。そのうえで、ケアマネジャー(介護支援専門員)に相談して病院への送迎サービスやホームヘルパーの付き添いなどのケアプランを組んでもらいます。介護保険の手続きには時間がかかりますが、介護保険の申請をしていれば暫定ケアプランにもとづいて介護保険サービスを開始することができます。

また、自宅から病院への送迎だけでよい場合は「福祉有償運送サービス」を利用する方法もあります。これは社会福祉協議会や訪問介護サービスを提供する訪問介護事業所などが行っているサービスで、通常のタクシーの半額程度の料金で利用できるため、経済的な負担も軽減できます。

がん患者さんの通院に関して困ったことがあれば、治療を受けている病院もしくはがん診療連携拠点病院に設置されている相談支援センターのメディカル・ソーシャルワーカー(MSW)に相談しましょう。相談支援センターでは、地域の患者さんやご家族からの相談も受け付けています。

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介護保険制度の手続きやサービスについて知りたいのなら
東京都福祉保健局「介護保険パンフレット」

相談支援センターの所在について知りたいのなら
「がん情報サービス」:相談支援センターの情報

Q3. 母が乳がんの手術後、体力が低下して独りで生活するのが難しくなったので、介護保険サービスを利用したいと思っています。手続きはどうすればよいですか。さらに毎月の費用はどのくらいかかるのでしょうか。

介護保険を利用するには自治体への申請が必要です。要介護認定を受けたうえでサービスは開始され、利用者の自己負担金はサービス費用の1割になります。

介護保険サービスを利用するには、自治体への申請がまず必要です。自治体で配布される介護保険の申請書を記入したうえで、65歳以上の人は介護保険証を添えて市区町村の介護保険担当課もしくは地域包括支援センターに提出します。

その後、市区町村から派遣された認定調査員が家庭を訪問し、利用者の心身の状態や日常生活の状況に関する聞き取り調査を行います。同時に市区町村の担当課では主治医(病院の担当医または地域のかかりつけ医)に意見書の作成を依頼し、後日それらの資料をもとに要介護認定の審査が行われ、要介護度が判定されます。この期間は通常1か月ほどかかるといわれています。

要介護度は7段階(要支援1・2、要介護1~5)に区分され、段階に応じて必要な介護サービスの量が決められています。要介護認定の区分が決定すれば、ケアプラン(居宅支援サービス計画書)を作成することになりますが、要支援1・2と認定された人は地域包括支援センターで利用できるサービスなどの助言を受け、プランを組むことになります。

要介護1~5に認定された人は、地域の居宅介護支援事業所に所属するケアマネジャー(介護支援専門員)の中から、利用者や家族が自由に選んだケアマネジャーと相談しながらケアプランを組んでいくことになります。

介護保険サービスの自己負担金はサービス費用の1割になりますが、それぞれの区分ごとに限度額(表)が設けられており、限度額を超えた分は全額自己負担になります。介護保険についてわからないことがあれば、治療を受けている病院もしくはがん診療連携拠点病院に設置されている相談支援センターのメディカル・ソーシャルワーカー(MSW)に相談しましょう。相談支援センターでは、地域の患者さんやご家族からの相談も受け付けています。

■表 居宅サービスの利用限度額

要介護状態支給限度額(1月当たり)本人負担(原則1割)
要支援149,700円4,970円
要支援2104,000円10,400円
要介護1165,800円16,580円
要介護2194,800円19,480円
要介護3267,500円26,750円
要介護4306,000円30,600円
要介護5358,300円35,830円

※標準的な額のため、地域区分により異なる場合があります。

対象サービス:
訪問介護・訪問入浴介護・訪問看護・訪問リハビリテーション・通所介護・通所リハビリテーション・短期入所生活介護・短期入所療養介護・福祉用具貸与・地域密着型サービス

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介護保険制度の手続きやサービスについて知りたいのなら
東京都福祉保健局「介護保険パンフレット」

相談支援センターの所在について知りたいのなら
「がん情報サービス」:相談支援センターの情報

Q4. 母は高齢なので定期的に通院するのが大変です。入院して抗がん剤治療(化学療法)を受けられますか。

抗がん剤が進歩し副作用に対する治療も改善されてきたことから、抗がん剤治療は外来で行われることが主流です。担当医に一度、相談してみましょう。

近年は、抗がん剤が進歩し、飲み薬だけで治療することもあります。さらに抗がん剤の副作用に対する対策も改善されてきました。そのため、抗がん剤を使い始めるときは入院して様子を見ながら行われる場合もありますが、副作用などの問題がなければ、それ以降の治療は外来に切り替わります。あるいは、最初から入院しないで外来で行うことも多くなりました。

患者さんや家族にとっては、できるだけ自宅に近い病院で治療を受けられることが望ましいのですが、抗がん剤治療などの専門的な医療はどこの病院でも気軽に受けられるものではありません。質の高い安全な治療を提供するために、ここ数年はがん診療の拠点となる病院に患者さんを集めて治療する「集約化」の動きが進んでいます。そのため、とくに地方においては患者さんが通院しづらい状況になっています。

「通院するのが大変」という理由だけでは入院治療はできない可能性が高いと思われますが、担当医に一度、相談してみましょう。

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化学療法について知りたいのなら
国立がん研究センターがん対策情報センター「がん情報サービス」:がんの薬物療法

Q5. ホルモン療法とは、どのような治療法ですか。

女性ホルモンに影響される(感受性のある)乳がんに対して行われる、女性ホルモンを抑える薬を服用する治療法です。

乳がん患者さんの6~7割は、女性ホルモンによって、がんが増殖しやすくなっています(「ホルモン感受性乳がん」「ホルモン依存性乳がん」)。

女性ホルモンには、エストロゲン(卵胞ホルモン)とプロゲステロン(黄体ホルモン)があり、卵巣の機能が正常で月経がきちんと来る女性では、エストロゲンとプロゲステロンが多く分泌されており、閉経前後や閉経してからは、副腎から分泌される男性ホルモンをアロマターゼという酵素がエストロゲンに変えています。そこで、乳がんでは組織診や手術で切除したがんから、これらの女性ホルモンと結合する受容体があるかどうかを調べ、女性ホルモンに影響されやすいかどうかをおおよそ判断します。

ホルモン感受性乳がんであれば、女性ホルモンを抑制するホルモン療法が効果があります。ホルモン療法では、年齢や影響している女性ホルモンに応じて、抗エストロゲン薬や選択的アロマターゼ阻害薬、黄体ホルモン分泌刺激ホルモン抑制薬などが使われます。

ホルモン療法は長期間にわたることが多く、ほてりやむくみ、体重増加など、いわゆる更年期障害に似た副作用が起こります。また、抗エストロゲン薬の長期使用で血栓症や子宮がんのリスクが上がり、選択的アロマターゼ阻害剤で骨粗鬆症のリスクが上がることが知られています。

患者さんも家族もホルモン療法の意味と副作用についてきちんと理解しておきましょう。

また、副作用は早めに対応することが大切です。気になる症状が見られたら、担当医、看護師、薬剤師に相談しましょう。

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乳がんについて知りたいなら
国立がん研究センターがん対策情報センター「がん情報サービス」:乳がん
「がん情報サービス」:診断・治療方法
「がん情報サービス」:各種がんシリーズの冊子・乳がん

Q6. 補整下着やかつら、帽子はどこで買えますか。

補整下着やかつら、帽子の購入先の情報は病棟看護師が教えてくれます。サンプル品を展示している病院もあります。さらに詳しい情報が知りたいときは、乳がん看護認定看護師に相談してみましょう。

乳房切除術を受けると乳房のふくらみがなくなるため、左右の胸の違いが目立つだけでなく、胸の重さに差が生じることによって体のバランスが取れなくなることがあります。このような不具合を調整し、外見もカバーするのが補整下着です。また、乳がんの化学療法で使用される抗がん剤の多くは脱毛の副作用が起こりやすく、治療を開始して2~3週間後に髪の毛などが抜け始めます。治療が終われば再び生えてきますが、治療中は脱毛を予防する有効な手段がないため、かつらや帽子などで対応することになります。

補整下着やかつら、帽子に関する基本的な知識、購入先などの情報は入院中に病棟看護師が教えてくれます。病院によってはサンプル品を展示しているところもあります。商品の選び方や購入する際のポイント、代用品の工夫などの詳しい情報が知りたい場合は、乳がん看護認定看護師(日本看護協会の認定資格。乳がん看護の分野で熟練した看護技術と知識を身につけた看護師)に相談するとよいでしょう。がん診療拠点病院で活動している乳がん看護認定看護師の中には、その病院で治療を受けていない患者や家族の相談に応じてくれる人もいます。

がん診療拠点病院に設置されている相談支援センターにまず連絡し、その病院に乳がん看護認定看護師が所属していれば紹介してもらいましょう。

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相談支援センターの所在について知りたいのなら
「がん情報サービス」:相談支援センターの情報

乳がん看護認定看護師の所在について知りたいのなら
日本看護協会「乳がん看護認定登録者一覧」

Q7. 化学療法とは、どのような治療法ですか。

「抗がん剤」と呼ばれる薬剤を使う治療法を示します。乳がんの場合は手術療法や放射線療法と組み合わせて使われ、がん細胞の増殖を抑える効果があります。

化学療法という言葉は広い意味では化学物質(薬)を使う治療法を指し、感染症などの領域でも化学療法という言葉が使われることがあります。一方、狭い意味では、「抗がん剤」と呼ばれる薬剤を使う治療法を指します。また、他のがんの薬物療法全般を指す場合もあります。治療の説明を受けたときには、医療スタッフが抗がん剤のみの話をしているのか、分子標的薬(がんに特有の、あるいはがん細胞に多い分子に結合して、がん細胞の増殖を抑える作用のある薬)やホルモン療法(がんを増殖させるホルモンを抑える治療法)も含めて化学療法と言っているのかを確認しておくと、話が混乱せず、理解しやすくなるはずです。

抗がん剤は、がん細胞の増殖を抑える薬で、活発に増殖する細胞を攻撃するため、正常な細胞もダメージを受けます。とくに細胞の増殖が盛んな、血液(特に白血球)や、舌、胃腸の粘膜、髪の毛などが影響を受けます。そのため、副作用として吐き気や嘔吐、手足のしびれ、発熱、むくみ、脱毛、口内炎などさまざまな症状があらわれますが、個人差が大きいことも知られています。副作用に対しては症状を和らげる支持療法が進み、たとえば吐き気や嘔吐には効果の高い吐き気止め(制吐剤)がうまく使われるようになってきました。

抗がん剤は単独で使われることは少なく、いくつかの抗がん剤を組み合わせて、あるいは分子標的薬やホルモン療法などと併用されることがよくあります。

血液がんは抗がん剤などの薬物療法が主な治療法ですが、臓器のがん(主に固形がん)は手術や放射線療法との組み合わせで使われることが一般的です。

近年は、通院による外来化学療法が主流です。外来化学療法には普段の生活スタイルをある程度維持しながら治療できるメリットがあります。ただ、夜間に発熱があったときの連絡方法など、自宅で起こりうる症状の対応策をしっかり聞いておく必要があります。また、最近は飲み薬の抗がん剤が登場しており、飲み忘れにも注意が必要です。

化学療法を受ける際には、家族も患者さんとともに担当医の説明を受け、治療の方法や投与スケジュール、予想される副作用やその対処法について確認しておきましょう。また、他の病気で服用している薬があれば事前に伝えましょう。

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化学療法について知りたいのなら
国立がん研究センターがん対策情報センター「がん情報サービス」:がんの薬物療法

Q8. 口内炎などのために、食事が十分に摂れなくなりました。食べさせたいのですが、どうすればよいでしょうか。

症状がつらくて食べられないときは患者さんの状態に合わせてやわらかいものや刺激の少ないものなど食べやすいものを用意し、食べられるときに食べてもらうようにします。

化学療法(抗がん剤による治療)や放射線療法などの治療の副作用で、口内炎や味覚異常、吐き気や嘔吐などの症状を伴うことがあります。副作用の強い時期を過ぎれば食べられるようになることが多いのですが、症状がつらくて食べられないときは患者さんの状態に合わせてやわらかいものや刺激の少ないものなど食べやすいものを用意し、食べられるときに食べてもらうようにしましょう。

口内炎ができたときは、うす味で水分が多めのやわらかい料理が食べやすいといわれています。また、食材を刻んだりミキサーにかけたりして小さくすると飲み込みやすくなります。冷たいお茶や水をこまめに取り、口の中の潤いを保つことも口内炎の症状を和らげるのに効果的です。口内炎を治療する内服薬やうがい薬、塗り薬などもありますので、担当医や看護師に相談してみましょう。つらい症状を我慢させることはありません。

治療中や療養中の食事の工夫について詳しく知りたいときは、担当医または看護師に申し出て、管理栄養士につないでもらい、アドバイスを受けるのがよいでしょう。

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治療中の食事のヒントについて知りたいのなら
財団法人がん研究振興財団:食事に困った時のヒント(がん治療中の患者さんとご家族のために)
国立がん研究センターがん対策情報センター「がん情報サービス」:患者必携 がんになったら手にとるガイド 食事と栄養のヒント P183

Q9. 放射線療法とは、どのような治療法ですか。

放射線でがん細胞を壊す治療法です。乳がんでは乳房温存療法の手術後の照射が一般的です。

放射線療法は、手術や薬物療法とともに、がんの3大療法の一つで、放射線をがんに照射して、細胞のDNAに働きかけ、がん細胞を壊したり、がん組織を小さくしたりする治療法です。細胞分裂が速い細胞によく効くため、正常細胞よりもがん細胞のほうがダメージを受けます。通常、使われるのはX線やγ線、電子線で、炭素線と陽子線を使う粒子線治療も行われています。体の外から照射する方法と、小さな線源を体の中に入れて照射する方法があり、体の表面に近い部分にできる乳がんでは体外からの照射で治療するのが一般的です。

放射線療法は単独で行われる場合と、手術や化学療法と組み合わせて行われる場合があります。乳がんでは放射線療法が単独で行われることはほとんどなく、乳房温存療法では、乳房部分切除の後、患部の側の残った乳房全体に外部照射します。ほとんどの場合は外来で治療できます。

臓器を切除する手術とは異なり、臓器の形や機能を残せるというメリットがある一方で、放射線を照射した部分を中心とした皮膚障害(日焼けをしたようなピリピリ感など)、だるさ、食欲不振、吐き気、口内炎などの副作用が出ます。また、治療後、半年から数年経ってから神経や皮膚などに「晩期障害」が出るケースもあります。照射してすぐは、皮膚が敏感になっているので、洗うときはそっと洗い、皮膚への刺激が少ない綿素材の下着などを着用しましょう。

治療中は患者さんの体調に気を配り、無理をさせないようにしましょう。なお、外部照射をしても家族など周りの人への影響はないので、放射線被ばくを心配する必要はありません。

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乳がんについて知りたいなら
国立がん研究センターがん対策情報センター「がん情報サービス」:乳がん

放射線療法について知りたいなら
国立がん研究センターがん対策情報センター「がん情報サービス」:放射線療法総論

放射線について知りたいなら
国立研究開発法人 量子科学技術研究開発機構 量子生命・医学部門 放射線Q&A

Q10. 術後にがんの取り残しが見つかりました。もう一度、手術をしなければなりませんか。

再手術が行われることもありますが、放射線療法や薬物療法(抗がん剤、ホルモン剤)が選択されることもあります。担当医から十分な説明を受け、よく相談しましょう。

乳房温存手術を行う場合、取り残しがないように手術中に病理検査(術中迅速診断)が行われますが、乳がんは乳房内に多発したり、乳管を通して網の目のように拡がっていくことがみられたりしますので、手術で取りきれたかどうかの判断が難しいことがあります。そのため、術後に十分な時間をかけて、顕微鏡の下で、確認をします。術後に行われる詳細な病理検査によって取り残しが判明した場合は、もう一度、手術を行い、乳房の一部を切除したり、残した乳房をすべて切除したりすることもあります。乳房がどのくらい、どんな状態で残っているのかなどによっても、その人によって選択される治療法は異なりますので、担当医から十分な説明を受け、これからの治療法についてよく相談してください。納得がいかない場合は別の医師の意見(セカンド・オピニオン)を受けるのもよいでしょう。

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セカンド・オピニオンについて知りたいのなら
国立がん研究センターがん対策情報センター「がん情報サービス」:各種がんシリーズの冊子・乳がん P26

乳がんについて知りたいなら
国立がん研究センターがん対策情報センター「がん情報サービス」:乳がん
国立がん研究センターがん対策情報センター「がん情報サービス」:診断・治療方法
国立がん研究センターがん対策情報センター「がん情報サービス」:各種がんシリーズの冊子・乳がん

Q11. 既往症のために予定の治療ができないといわれました。どうすればよいでしょうか。

まず既往症をよく調べてもらい、治療できない理由をきちんと理解することが大切です。既往症によっては、他の医療機関で治療できることもありますので、セカンドオピニオンを受けてみましょう。

既往症の中にはがんの治療を行うことで、全身の状態を悪くさせてしまうものもあります。まず、既往症の状態をよく調べてもらい、がんの治療からどのような影響を受けるのか、がんの治療にどんな影響を及ぼすのかをきちんと理解することが大切です。既往症によっては、他の医療機関で対応が可能なことがあります。また、既往症がある患者さんのがんの治療方針は、医師や医療機関によって異なる場合があります。他の医師や医療機関でセカンドオピニオンを受けてみるといいでしょう。その際には、がんの病状のほか、既往症の経過、検査結果などがわかるとよりよいアドバイスが受けられます。また、患者さんが既往症でかかっている(かかっていた)医師の意見も聞いてみましょう。また、もし同じ病院内に患者さんの既往症の専門医がいる場合には、担当医に相談し了解を得たら、その医師の意見を聞いてみるのも一つの方法です。

セカンドオピニオンを受けたら、その結果を担当医に伝え、もう一度、治療方針について話し合います。場合によっては、紹介状などを通じて、医師同士に直接話し合ってもらうことも必要かもしれません。

治療を進めていくことになったら、がんの治療と既往症の治療のスケジュールと内容を医師とよく相談し、調整してもらうようにしましょう。

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セカンドオピニオンについて知りたいのなら
国立がん研究センターがん対策情報センター「がん情報サービス」:各種がんシリーズの冊子・乳がん P26

乳がんについて知りたいなら
国立がん研究センターがん対策情報センター「がん情報サービス」:乳がん
「がん情報サービス」:各種がんシリーズの冊子・乳がん

Q12. 外来化学療法を受けています。「具合が悪いときは電話してください」といわれていますが、どのような症状になったときに連絡すればよいのでしょうか。

使用する薬剤によって出てくる症状は違いますので、担当医や外来化学療法室の看護師、薬剤師からよく説明を受け、どのような状態になったら電話をしたほうがよいのか、具体的に聞き、副作用に関する注意事項のメモを作っておきましょう。

治療に使用する薬剤の種類や治療の予定によって、気をつけなければならない副作用は異なります。家族も患者さんと一緒に担当医の説明を受け、わからないことがあれば遠慮なく聞きましょう。

使う薬の名前、効果や副作用(軽度・中程度・重度別に)、副作用が出てきやすい時間、副作用の対処法についてわかりやすいメモを作りましょう。難しければ、薬剤を販売している製薬会社では患者さん用の服薬記録などの資料を作成し、自社のホームページで閲覧できるようにしたり、外来化学療法室の看護師や薬剤師に配布したりしていますので、そのような資料も参考にしてみましょう。そして、そのメモを持ち歩くか、すぐに見られる場所に置いておきます。

実際に副作用と思われる症状が出て、受診することを迷ったときは、外来化学療法室の看護師や薬剤師に早めに電話で相談し、指示を受けましょう。

なお、経口の抗がん剤を服用している場合は、かかりつけ薬局の薬剤師にも、同じように副作用とその対処法を聞いておきます。治療を受ける前に起こりうる副作用の症状や、その対処法を知っていれば、安心して治療に臨めます。

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外来化学療法について知りたいなら
患者必携 がんになったら手にとるガイド
薬物療法(抗がん剤治療)のことを知る P139

がんの薬物療法について知りたいなら
国立がん研究センターがん対策情報センター「がん情報サービス」:がんの薬物療法
患者必携 がんになったら手にとるガイド
薬物療法(抗がん剤治療)のことを知る P139

乳がんについて知りたいなら
国立がん研究センターがん対策情報センター「がん情報サービス」:乳がん
「がん情報サービス」:各種がんシリーズの冊子・乳がん

Q13. 強い副作用を伴う抗がん剤は体に悪いと聞きました。化学療法を受けないほうがよいですか。

どのような薬にも必ず副作用があります。抗がん剤治療を受けることでどのようなメリット(効果)とデメリット(副作用)があるのかを十分に理解したうえで、化学療法を受けるかどうか決めましょう。今は、副作用のつらい症状を抑えたり緩和したりする方法も進んでいます。

抗がん剤は、手術で切除しきれなかったがん、放射線療法で叩き切れなかったがん、全身に散らばっているかもしれないがん細胞を治療するために有用な治療法です。

ただ、抗がん剤はがん細胞だけでなく活発に増殖する正常な細胞に対しても作用するため、いろいろな臓器や機能に障害が起こります。これが副作用です。主なものとしては、吐き気や食欲不振、口内炎、骨髄抑制(白血球などが減る)などが挙げられます。

化学療法の治療効果を期待するのであれば、副作用にも付き合わなくてはなりません。しかし、近年は副作用対策が進歩し、つらい症状を薬剤で抑えたり、脱毛などの症状にはウィッグを使うなど生活上の工夫で緩和したりすることもできるようになりました。副作用がつらい場合は決して我慢しないで、早めに担当医や外来化学療法室の看護師や薬剤師に相談するよう、ご家族も患者さんにすすめてください。

また、がん以外の慢性疾患などを患っているならば、そのことを担当医に伝えましょう。場合によっては検査などで体調や病状を確認したうえで、化学療法を受けるかどうかを検討したり、薬の種類を変えたりする必要が出てきます。

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がんの薬物療法について知りたいなら
国立がん研究センターがん対策情報センター「がん情報サービス」:がんの薬物療法
患者必携 がんになったら手にとるガイド
薬物療法(抗がん剤治療)のことを知る P139

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「がん情報サービス」:各種がんシリーズの冊子・乳がん

Q14. 医師に副作用を訴えたのですが、うまく伝わりません。どうすればよいでしょうか。

つらいと感じていることをメモにまとめ、医師に渡して理解してもらいましょう。病棟や外来化学療法室の看護師や薬剤師などに相談するのも一つの方法です。

伝えたいことは箇条書きのメモにして、面談のときに読む、あるいは会えないときは看護師を通して担当医に手渡すと、患者さんがつらいと感じていることを理解してもらいやすいでしょう。また、メモ書きにすることにより、自分が訴えたいことを整理できる利点もあります。①いつから、②どのような症状が、③どのくらい続いて、④どうつらいのか、⑤市販薬やサプリメントを含めて何か他の薬を飲んでいないか、を書いてみて、面談の際に担当医にその症状が起こっている理由を聞きます。

また、入院中であれば病棟の看護師や薬剤師、通院中なら外来化学療法室の看護師や薬剤師にも相談してみましょう。話を聞いてもらうことによって問題点が整理され、担当医にどう言えば、うまく伝わるのかを一緒に考えてくれたり、場合によっては、担当医との面談時に同席して会話の調整役をしてくれたりすることもあります。担当医にうまく伝わらないからといって、つらい副作用を我慢するのはやめましょう。

患者さんや家族は治療の副作用だと思っていても、がんそのものによる症状であったり、精神的なストレスが隠れていたり、まったく別の病気であったりするケースもあります。つらい症状を副作用だと思い込まずに、誰かに相談することが大事です。

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乳がんについて知りたいなら
国立がん研究センターがん対策情報センター「がん情報サービス」:乳がん
「がん情報サービス」:各種がんシリーズの冊子・乳がん

Q15. 家族が通院に付き添ったほうがよいでしょうか。

患者さんの心身の調子を見て、付き添うかどうかの判断を。患者さんの体調が思わしくなかったり不安が強かったりする場合は、無理のない範囲で調整し、付き添うほうが患者さんも安心でしょう。

退院後にホルモン療法や化学療法などの治療を継続していても、副作用がうまくコントロールされていれば、ふだんどおりの生活を送れることがほとんどです。通院も患者さんが自分ひとりでできるのであれば、必ずしも付き添わなくてもかまいません。

しかし、副作用の症状は患者さん本人にしかわからないので、患者さんがつらそうなときは我慢をさせず、担当医や看護師に遠慮なく伝えられるよう、手助けするために一緒に外来受診することも一つのサポートです。

ときには付き添い、担当医との診察の様子を見ることで、家族は想像していなかった患者さんの不安や悩みなどを知ることができるかもしれません。担当医の話を一緒に定期的に聞くことで、家族もこれからの見通しが理解しやすくなり、今後の治療を決めるのにも役立つかもしれません。

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乳がんについて知りたいなら
国立がん研究センターがん対策情報センター「がん情報サービス」:乳がん
「がん情報サービス」:各種がんシリーズの冊子・乳がん

Q16. 医療費(手術・放射線治療・薬物療法)の他に、ウィッグや下着、病院までの交通費などいろいろと費用がかさみます。負担を軽くする制度などはありますか?

病院や調剤薬局でかかる医療費には、健康保険の高額療養費制度を使って負担を軽減する仕組みがありますが、ウィッグや下着、病院までの交通費など通院にかかる費用については健康保険によるカバーの対象とはなりません。

抗がん剤治療などによって脱毛した際に購入するウィッグについては、自治体によっては費用の助成を行っているところも出てきています。お住まいの自治体(都道府県・市区町村)のホームページや窓口に確認してみましょう。

また、自己負担した医療費や、通院にかかった交通費などについては、「医療費控除」という税金の仕組みを使って、負担を軽減することができる場合があります。
「医療費控除」とは、所得税の軽減の仕組みです。つまり、1年間(1月1日~12月31日)に自分で負担した医療費が10万円以上の場合(注)に払っている所得税を、税務署に確定申告をすることで戻してもらう手続きのことです。

この医療費控除については、病院にかかった医療費だけでなく、ドラッグストアで購入した一般薬のほか、入院時の差額ベッド代、通院にかかった交通費なども対象となります。 通院にかかった交通費については、原則は公共交通機関利用分が対象となります。タクシー代については、病状などによりやむをえない場合に対象となります。自家用車を通院に利用した場合のガソリン代は対象外です。

(注)総所得金額が200万円未満の人の場合は、年内で支払った正味の医療費が「総所得金額等×5%」以上支払っているとき、となります。

リンク
「お金と生活の支援」(がん情報サービス)

Q17. 治療のため仕事を休職することにしました。休職期間中の医療費・生活費が心配なのですが、利用できる制度は何かありますか?

もし、あなたが仕事をされていて国民健康保険以外の健康保険に被保険者(本人)として加入されていれば、「傷病手当金」という制度が利用できるかもしれません。
傷病手当金は、病気によって療養が必要な場合で仕事を休み、給与が減額・無給になった場合等に加入している健康保険から支給される制度です。概ね給与の3分の2位が支給されます。病気ごとに、受給したときから最大1年6か月支給されます。

「傷病手当金」を受けるためには、いくつかの条件がありますので、加入されている健康保険に確認してみましょう。自分が加入している健康保険の名称は、保険証に書かれています。「保険者」という欄に書かれている団体が問い合わせ先となります。

医療費に関して使える制度については、こちらをご覧ください。

リンク
傷病手当金について(協会けんぽ)
※協会けんぽ以外の、健康保険組合や、共済組合は、傷病手当金にさらにプラスして、「付加金」として給付しているところもあります。 なお、国民健康保険には、傷病手当金はありません。
お金と生活の支援「生活費等の助成や給付など」(がん情報サービス)

Q18. 副作用がつらく、日常生活も困ることがあります。今の仕事は体力的にもきついため、退職して治療に専念する予定です。収入がなくなってしまいますが、利用できる制度はありますか?

退職後に利用できる制度としては、「資格喪失後の傷病手当金」・「障害年金」・「失業等給付」(いわゆる「失業保険」)などが考えられます。

○「資格喪失後の傷病手当金」
傷病手当金は、次の条件を満たしているとき、退職後も引き続き受給することができます。

1)継続して1年以上加入していること
2)在職中に3日間の待期期間が終了していること
3)在職中に傷病手当金を受けている・受ける権利があること
4)退職日において労務に服していないこと

受給期間は、最初に給付を受け始めた日から最長1年6か月です。請求先は、加入していた健康保険となります。

○「障害年金」
病気が理由で日常生活に支障が出ている場合、障害年金の受給ができる可能性があります。
障害年金は、障害認定日(原則的には病気の初診日から1年6か月経過している時点)で、年金の障害等級に該当していれば、その病気の初診日時点に加入している年金制度(国民年金または厚生年金)から支給されるものです。がんの場合、治療による副作用等により、日常生活に支障を来している場合などにも対象になる場合があります。
問い合わせ・請求先は、お近くの年金事務所となります。

リンク
障害年金(日本年金機構)

○「基本手当」(いわゆる「失業保険」)
雇用保険に加入していた方が離職し、求職活動をしている間、基本手当を受けることができます。ただし、基本手当は、仕事が可能で、かつ、求職活動をしている場合に支給されるものです。したがって、体力がなく、治療に専念する場合は対象外となります。

しかし、この基本手当は、体力が戻り、仕事が可能となった場合に受けることが可能ですので、受給期間の延長手続きをしておくことをお勧めします。最大4年延ばすことができます。受給期間の延長手続きは、離職後すぐに行うようにします。

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基本手当(ハローワークインターネットサービス)

以上、退職後を乗り切りために利用できる主な公的制度を見てきました。

しかし、退職後の生活を考える前に、まずは、本当に退職がベストな選択なのか、もう一度考えてみましょう。退職はご自身が望んでいることですか? 治療の副作用はどのくらい続く見込みでしょうか? 今後の生活の見通しはついていますか?
もし、「会社に申し訳ない」「迷惑をこれ以上かけられない」と思って、自分から身を引くおつもりなのであれば、立ち止まって、まずは会社の制度について確認してみましょう。
会社に休職制度はないでしょうか? 有給休暇はどうでしょうか? 会社によっては、病気の時に使える病気休暇や、有給休暇の積立制度の利用が可能な場合もあります。
会社の休暇等の制度は、就業規則や労働契約書に書かれています。よく分からない場合は、会社の人事労務担当者に確認してみることをおすすめします。

休めるのであれば、休んで、その間に次の生活を考えるのも一つの方法です。退職はそのあとから考えても遅くはありません。辞めるのは容易ですが、辞めてしまうと、元に戻ることは非常に困難です。後から悔やむことがないようにしっかりと確認したうえで考えてみましょう。