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乳がんの情報サイト

監修:
聖路加国際病院 乳腺外科部長・ブレストセンター長
山内 英子 先生

Q1. 手術までの間、どのように母(患者)に接すればよいでしょうか。

手術を待つ間は不安が募ります。患者さんの言葉に耳を傾けて、温かく見守りましょう。

手術を待つ間は、患者さんもご家族も不安が募ることでしょう。この期間は、患者さんにとっては、できるだけ心身の調子をよくしておくこと、入院とその後の療養に備えて、仕事や家事の大事な部分を引き継いでおくことが大切になります。また、趣味のような、手術後にしばらくできなくなることをするなど、何かに取り組むことが不安な気持ちを安らげ、手術に向かう心の準備にもなります。手術を待つ間、このような日常が過ごせるように患者さんを支えてあげることがご家族の役割になります。そして、患者さんがしてもいいこと、しないほうがいいことの情報を共有し、患者さんに必要以上の安静を強いる必要はありません。

この時期、患者さんは周囲の人たちに「普通に接してほしい」と思いつつも、自分にかまってくれないと「心配していない」と寂しく感じるなど複雑な思いを抱えています。家族も患者さんの気持ちの変化が大きいことに戸惑いますが、患者さんの言葉に耳を傾けて、温かく見守りましょう。

また、患者さんが乳がん治療の予習をしたり、医師の説明を聞いたりするのにつき合うのもいいでしょう。ご家族が図書館などで乳がんに関する本や闘病記などを探して読むのもいいかもしれません。こうしたことがご家族自身の患者さんの手術に対する心の準備や、闘病に伴う生活の変化への備えにつながります。

患者さんの精神的な不安や落ち込みが気になり、どのように対応してよいのかわからない場合、また、ご家族自身もつらさに耐えられない場合は担当医や看護師、精神的なサポートをしてくれる精神腫瘍科の医師やがん診療連携拠点病院に設置されている相談支援センターなどに相談するのも一つの方法です。

なお、手術の前後に抗がん剤や放射線療法の予定がある場合は、これらの治療後に副作用として口内炎が起こったり、免疫力が低下して虫歯や歯周病が進行したりすることがあるため、事前に歯科でのチェックや治療を患者さんに勧めてあげてください。

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患者さんの心の動きについて知りたいなら
国立がん研究センターがん対策情報センター「がん情報サービス」:がんと心
「がん情報サービス」:ストレスへの心の反応

相談支援センターの所在について知りたいのなら
「がん情報サービス」:相談支援センターの情報

精神腫瘍医の所在について知りたいのなら
日本サイコオンコロジー学会「登録精神腫瘍医制度」

こころやコミュニケーションのサポートについて(ノバルティスファーマ)
こころやコミュニケーションのサポート

Q2. 母が乳がんの手術をする日に仕事を休めないのですが、どうすればよいでしょうか。

不測の事態に備えて、あらかじめ連絡方法などを確認しておきます。

手術日の家族の立ち会いに関しては、病院ごとの手続きがあるはずです。担当医や看護師によく確認しましょう。家族が必ずしも手術に立ち会わなくてもよいですが、通常は手術後すぐに執刀医から手術時の状況や病状に関する説明があるので、できれば患者さんの親族や親しい友人などに立ち会ってもらえると安心です。それが難しい場合は、執刀医の説明を受ける日時をあらかじめ決めておきましょう。

また、手術中や手術の前後にどのような事態が考えられるのか、何かあったときに最初に誰にどのように連絡してもらうのかなどを確認し、手術当日に不測の事態が起こっても対応できるように準備しておきます。

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手術やその後の経過について知りたいとき
聖路加国際病院ブレストセンター「乳がんの治療を受けられる方へ」(PDF)

Q3. 入院生活で困ったときは、誰に相談すればよいですか。

病棟の看護師に相談しましょう。入院から退院まで同じ看護師が患者さんをサポートする「プライマリーナース制」を取り入れる病院も増えています。

手術後に一人でトイレに行けない、同室の患者さんのいびきが気になって眠れないなど、入院生活では予想もしなかった出来事がいろいろ起こります。入院生活を快適に過ごすことは早い回復につながります。困ったときは我慢せずに病棟の看護師に相談してみましょう。患者さんの訴えに耳を傾け、相談に応じるのも看護師の大切な役割の一つです。最近では「プライマリーナース制」といって、入院から退院まで一人の患者さんを同じ看護師が受け持つ仕組みの病院も増えてきました。

また、病室を変わりたいときやほかの入院患者さんとの間でトラブルが起こったときは、病棟の責任者である看護師長に相談したほうが早く解決することもあります。入院費をはじめ経済的な問題で困ったときは、看護師長から医療ソーシャルワーカーを紹介してもらうとよいでしょう。

Q4. 母が痛みをこらえています。見ているほうがつらくなりますが、仕方がないことでしょうか。

痛みを上手にコントロールする方法が確立されているので、痛みに対しても適切な治療を受けることが大切です。

痛みに耐えることによって、がんに勝っているような気持ちになるのは多くの患者さんによくみられる心理です。しかし、それは必要のない我慢です。WHO(世界保健機関)では、がんの痛みは治療すべき症状であると提言し、「がん疼痛治療指針」を発表しています。この治療指針をもとに現在、多くの医療機関では痛みを上手にコントロールする方法が確立されていますので、痛みに対しても適切な治療を受けることが大切です。家族は、そのことを患者さんに伝えるとともに、担当医にも患者さんの痛みの状態(①いつから、②どこが、③どのように、④どの程度の強さで、⑤痛みが強くなるとき、痛みが楽になるときなど)と、痛みに対する患者さんの気持ちを伝え、きちんと痛みを取り除いてもらいます。

また、痛みが上手にコントロールできないときは緩和ケアチームのサポートを受けるのもよいでしょう。緩和ケアチームでは、痛みのケアを専門とする緩和ケア専門医や緩和ケア認定看護師が中心となって活動しています。さらに近年は、緩和ケア外来を開設する医療機関も増えてきましたので、積極的に利用しましょう。

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がんの痛みについて知りたいのなら
痛みを我慢しない(がん情報サービス)

緩和ケアについて知りたいなら
国立がん研究センターがん対策情報センター「がん情報サービス」:がんとつき合う・緩和ケア

緩和ケアチームの所在について知りたいのなら
日本緩和医療学会「緩和ケアチーム登録」:登録施設一覧ページ
日本ホスピス緩和ケア協会「受けられる場所を探す」:緩和ケアチーム

緩和ケア専門医の所在について知りたいのなら
日本緩和医療学会「専門医認定制度」:専門医名簿

緩和ケア認定看護師の所在について知りたいのなら
日本看護協会「緩和ケアの認定看護師登録者一覧」

Q5. 再発が怖いので、乳房を全摘し、病巣を徹底的に取り除いたほうが安心ですか。

乳がんの手術は「できるだけ小さく切除し、乳房を温存する」方向に変わりましたが、最近では乳房を切除した後に乳房再建術を受ける方法を選ぶ人も増えています。担当医から病状や治療の選択肢、再建術のメリットやデメリットについてよく説明を受けて選ぶことが大切です。

以前は、乳がんはまず胸部やリンパに拡がり、そこから全身へ拡がっていくので、胸部やリンパを手術にて徹底的に取ることにより乳がんの全身への転移を防ぐことができると考えられていました。その後、転移に関する研究から乳がんがしこりとして見つかる以前から、すでに微小転移の形で体内に転移の種が存在すると考えられるようになり、乳がんは全身病だといわれるようになりました。また、乳房を残しても全摘した場合と治療効果(生存率)が変わらないことがわかってきました。それに伴い、乳がんの手術は「がん細胞の取り残しがないようにできるだけ大きく切除する」ことから「できるだけ小さく切除し、乳房を温存する」方向へと変わりました。ただし、手術で患部を取るだけでは同じ胸に再発が起こってくるため、放射線を照射して再発率を低下させることが行われています。それでも、全摘する場合に比べて再発率は少し高くなります。乳房を全摘すると再発のリスクは減らせますが、全摘することによる乳房の喪失感は拭えませんので、乳房再建を検討することが必要です。担当医から病状や治療の選択肢についてよく説明を受け、患者さんの希望を汲み取りながら、治療法を選ぶことが大切です。納得ができないときはセカンド・オピニオンを受けるといいでしょう。

また、手術でほぼ完治する人は全体の1割といわれており、残り9割の人は手術後にホルモン療法や化学療法(抗がん剤)、などを組み合わせることで再発を予防するのが一般的ですが、乳房の手術の選択によって、これらの全身に対する治療が変わることはありません。

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乳がんについて知りたいなら
「がん情報サービス」:乳がん
「がん情報サービス」:各種がんシリーズの冊子・乳がん

Q6. 乳房の再建を考えているのですが、手術と同時に受けられますか。

乳房切除手術と同時に行う「一期再建」と、後から再建手術を受ける「二期再建」の2つの方法があります。一期再建のほうが身体的・コスト的な負担は少ないといわれますが、病状によっては受けられないこともあります。

再建とは、乳がんや治療のために失われた乳房を再び形成する手術のことです。通常、おなかや背中などの自分の組織か、シリコンなどの人工物を使います。乳がんを切除する手術と同時に再建する「一期再建」と、術後しばらく経ってから再建する「二期再建」とがあります。

一期再建は手術が一度で済むこともあり、二期再建に比べて患者さんへの負担は少ないといわれています。また、公的医療保険が適用されます(人工物を使った再建手術の場合、手術や入院には保険が効きますが、シリコンなど人工物の費用は自費になります)。ただ、病状によっては切除手術の経過を見たうえで、二期再建するほうが望ましい場合もあります。また、この手術は再建手術に慣れている形成外科医が行うほうがきれいに仕上がります。再建を希望する場合は、担当医に伝え、切除手術の前に再建の方法や担当する医師について、よく相談しておくことが大切です。病状によっては受けられないこともあります。

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乳房再建について知りたいなら
国立がん研究センターがん対策情報センター「がん情報サービス」:各種がんシリーズの冊子・乳がん P15

乳がんについて知りたいなら
「がん情報サービス」:乳がん

Q7. 手術の日は病院に泊まり込み、看病したほうがよいでしょうか。

日本の病院には基準看護が導入されており、泊まり込みの看病は必要ありません。泊まりで付き添いを希望する場合は、事前に担当医、病棟の看護師長、担当看護師に相談しましょう。

日本の病院には基準看護が導入されており、患者さんの身のまわりの世話はすべて看護師らが行います。したがって、手術の前日や当日を含め、家族が付き添って看病する必要はありません。ただ、病状が心配なので付き添いたい場合、または患者さんに認知症などの心配される既往症がある場合などは、医師の許可のもとで、泊まり込んでの看病が可能なこともあります。手術の前にあらかじめ担当医や病棟の看護師長、担当看護師に相談し、確認しておきましょう。

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乳がんについて知りたいなら
「がん情報サービス」:乳がん

Q8. 医療費(手術・放射線治療・薬物療法)の他に、ウィッグや下着、病院までの交通費などいろいろと費用がかさみます。負担を軽くする制度などはありますか?

病院や調剤薬局でかかる医療費には、健康保険の高額療養費制度を使って負担を軽減する仕組みがありますが、ウィッグや下着、病院までの交通費など通院にかかる費用については健康保険によるカバーの対象とはなりません。

抗がん剤治療などによって脱毛した際に購入するウィッグについては、自治体によっては費用の助成を行っているところも出てきています。お住まいの自治体(都道府県・市区町村)のホームページや窓口に確認してみましょう。

また、自己負担した医療費や、通院にかかった交通費などについては、「医療費控除」という税金の仕組みを使って、負担を軽減することができる場合があります。
「医療費控除」とは、所得税の軽減の仕組みです。つまり、1年間(1月1日~12月31日)に自分で負担した医療費が10万円以上の場合(注)に払っている所得税を、税務署に確定申告をすることで戻してもらう手続きのことです。

この医療費控除については、病院にかかった医療費だけでなく、ドラッグストアで購入した一般薬のほか、入院時の差額ベッド代、通院にかかった交通費なども対象となります。 通院にかかった交通費については、原則は公共交通機関利用分が対象となります。タクシー代については、病状などによりやむをえない場合に対象となります。自家用車を通院に利用した場合のガソリン代は対象外です。

(注)総所得金額が200万円未満の人の場合は、年内で支払った正味の医療費が「総所得金額等×5%」以上支払っているとき、となります。

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「お金と生活の支援」(がん情報サービス)

Q9. 治療のため仕事を休職することにしました。休職期間中の医療費・生活費が心配なのですが、利用できる制度は何かありますか?

もし、あなたが仕事をされていて国民健康保険以外の健康保険に被保険者(本人)として加入されていれば、「傷病手当金」という制度が利用できるかもしれません。
傷病手当金は、病気によって療養が必要な場合で仕事を休み、給与が減額・無給になった場合等に加入している健康保険から支給される制度です。概ね給与の3分の2位が支給されます。病気ごとに、受給したときから最大1年6か月支給されます。

「傷病手当金」を受けるためには、いくつかの条件がありますので、加入されている健康保険に確認してみましょう。自分が加入している健康保険の名称は、保険証に書かれています。「保険者」という欄に書かれている団体が問い合わせ先となります。

医療費に関して使える制度については、こちらをご覧ください。

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傷病手当金について(協会けんぽ)
※協会けんぽ以外の、健康保険組合や、共済組合は、傷病手当金にさらにプラスして、「付加金」として給付しているところもあります。 なお、国民健康保険には、傷病手当金はありません。
お金と生活の支援「生活費等の助成や給付など」(がん情報サービス)