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乳がんの情報サイト

監修:
テキサス大学M.D.アンダーソンがんセンター
上野 直人 先生

アドバイス1 あわてずに自分の病気を知ろう

病院で「がん」だと言われても、決してあせらないでください。

とにかく一歩引いて考えましょう。先入観も、今までの知識も、全部捨ててください。まっさらな気持ちで、「がんではないかもしれない」と疑ってみることから始めましょう。

本当にがんなのか、はっきりさせることが大切です。

必ず顕微鏡で細胞を検査(細胞診)して確定診断をしてもらいましょう。

がんと確定診断されたら、どの場所にできたがんか、どのくらい進行しているがんなのか(病期)を知るのも大切です。

がんが小さくまとまっていて転移の恐れもないⅠ期なら、手術で取り除けば完全に治る可能性があります。しかし多くの病期ではいろいろな治療を組み合わせることになります。

「治療法はこれ1つしかない」と言われたら、本当にそれしかないのかをまず聞きましょう。

そして、セカンドオピニオン(別の専門家の考え方)を聞いてみることをおすすめします。

がんは治療法が進み、「不治の病」「命がけで退治する病気」から「治る病気」「長くつきあう病気」になりつつあります。

生活の中心ががんの治療になってしまいがちですが、できるだけ普通の生活を送りながら気長に治療が続けられるように、医療者と一緒に工夫していきましょう。

アドバイス2 必要な情報を病院で集める

診察室でのコミュニケーションは真剣勝負です。メモの用意をして診察にのぞんでください。

一言も漏らさず聞くぞという気合いが医師にも伝わります。また、レコーダーの併用もおすすめします。繰り返し聞けるため、聞き逃しを防げます。録音する際には「先生の説明をちゃんと理解したいので、録音させてください」と許可をもらいましょう。メモと音声記録を活用して、理解できないことや疑問点を整理し、次の診察で質問してみるといいでしょう。

※携帯電話などの録音機能を使用する際は、オフラインモードにするなど、周りの方にご配慮ください。

重い病気や慢性の病気にかかったときほど、冷静な立場の人と一緒に医師の話を聞くことをおすすめします。

家族や友人は精神的な支えとなり、正確に話を聞き取り、客観的な判断をしてくれます。

積極的に医療者とのコミュニケーションの腕を磨いてください。

診察後に質問・疑問が浮かんだときにはメモをしておき、疑問に思ったことは必ず医師に確認しましょう。適切な質問をし、相手のさらなる説明を引き出せるように、コミュニケーション上手になりましょう。

アドバイス3 「自分のカルテ」を自分で作る

自分の飲んでいる薬の記録をしましょう。

そして、それらの薬について、2つの名前(製品名・一般名)、用法、用量、目的などを書けるようになりましょう。

記入例のイメージ

次に、あなた自身のカルテを作りましょう。

できれば、2種類、これまでの病歴すべてを詳しく書いてあるものと簡易版の2つを用意しておきましょう。それをもとに、医師とのコミュニケーションをスタートさせましょう。

カルテのイメージ

アドバイス4 質問上手になる

医師に説明を求めるにはタイミングが大事です。

聞きたいことを十分に聞くためには、医師が余裕を持って話ができる他の時間の約束をもらいましょう。あるいは診察時に、いま質問の時間がとれそうか、医師の都合をたずねてみるのもよいでしょう。

適切な説明を引き出すために、質問を簡潔な箇条書きにしておきましょう。

また、事前に質問リストを渡しておくと、医師も準備ができます。

質問リストの例

コメディカル(看護師、薬剤師など医師以外の医療従事者)にも質問をしてみましょう。

質問時間が取りやすかったり、質問によっては医師に代わって答えられる場合もあり、またその病院を知るうえでも役立つでしょう。

上手に質問するには病気について自分でも勉強し、自分の考えを整理しておくことが大切です。

自分にとって何が大事か、優先すべきことは何か、手術後の人生をどう考えているか、きっちり自己分析しておきましょう。そして、必要なことが質問できるように、日頃から練習しておきましょう。

アドバイス5 医師の話した内容を消化する

家族や友人を相手に、自分の病気を説明する練習をしましょう。

他の人にわかるように説明できれば、あなた自身が理解しているといえます。それにより、さらに医療従事者とのコミュニケーションを進めていくことが可能になります。

説明の練習例

図書館やインターネットを利用して、医師からの説明を復習したり、自分でも勉強してみましょう。

それには、自分にとって参考にすべき資料は何か、医療従事者に確かめることが大事です。テレビ、雑誌、書籍などの情報は鵜呑みにせず、主治医に相談しましょう。

「書き残す」「確認する」ことが大切です。

説明の練習で整理できた情報や、復習であいまいなところ、予習で疑問に思ったことなどは書き残して、医療従事者に説明・確認しましょう。

病気のときは、あせったり、落ち込んだり、判断がつかなくなるのは仕方のないことです。

そんなときこそ、自分に時間をあげましょう。自分の心の状態を落ち着かせ、病気を理解してから、前向きな治療に取り組みましょう。

アドバイス6 標準療法か確かめる

治療を決定する際には、まず自分の病気の「標準療法」は何かを知りましょう。

医師に「私が受ける治療は標準療法ですか?」とたずねてください。標準療法は、多くの専門家の合意が得られ、ガイドラインに基づいた、最大多数の人が確実に延命する療法です。また、標準療法は膨大なデータにより経過と結果、利点と危険性(ベネフィットとリスク)が明快にわかっている治療です。

標準療法とは、地図でいえば誰もが通りやすいメインストリート。危険な箇所もすべてわかっていて、きちんと道路標識が整備された目的地までの1番の近道ということができるでしょう。

複数の選択肢を提示された場合には、その中で自分にはどれが一番合っているかを考えましょう。

もし、標準療法でない治療をすすめられたら、その理由をたずねましょう。心臓病の持病があるので、心臓への副作用が少ない薬を使うといった明確な理由がわかれば安心です。

最新治療や臨床試験などのオプションは、標準療法を試したうえで、視野に入れましょう。

氾濫する最新治療の情報に惑わされてはいけません。最新治療を検討する際には、それが標準療法になっているのか、臨床試験がすでに行われているのか、新しすぎてまだ何もわかっていないのかなど、詳しく知らなくてはなりません。また、臨床試験においても同様の考慮が必要です。

アドバイス7 ベストの治療法を決断する

自分にとってベストの治療法を選択するために、下記のリストを一つひとつ確認してみてください。すべてにチェックを入れられたとき、治療法を決断しましょう。

「エビデンス」とは・・・
日本語では「科学的根拠」などと訳されています。エビデンスがあるかどうかということに加え、どのレベルのエビデンスなのかが重要です。

エビデンスのレベル
治療法を決定するときのチェックリスト

アドバイス8 自分の希望を伝えよう

病気の治療法は1つではありません。

どんな状況においても選択肢(オプション)があります。そして選択は、あなたのライフスタイルや希望によって個別化されるべきものです。治療の前はもちろん、治療の途中でも常に自分の希望を医師に伝えましょう。

自分の最優先事項は何かを伝えましょう。

例えば、乳がんでしたら「乳房を失いたくない」ということが何にもまして強い希望である場合もあるでしょう。また、副作用の強い治療を受けたくない、積極的な治療を受けたい、なるべく入院期間を短くしたいなど、人それぞれ最優先にすることは違うはずです。それぞれの希望を優先する治療と、標準療法を比べながら、医師と一緒に検討することが大切です。

症状が悪化したときのことは、元気なときに考えておきましょう。

最悪の事態になったときでは、冷静な判断ができません。自分が希望しているのは何か、家族とも話し合い、どんな治療を受けたいかを医師に伝えておきましょう。

アドバイス9 恐れずにチャレンジしよう

セカンドオピニオンを取る目的は、自分の病気の診断や治療方針について、違う角度から見た意見を聞くことです。

別の病院の医師や、専門が違う医師の意見を聞いてみることで、より広い視野で考えることができるようになります。自分が納得できる方向が見つからないときは、サードオピニオンを受けてみるのもよいでしょう。

臨床試験への参加も考えてみましょう。

その際に、まず確認することは、自分は標準療法を受けたかどうかです。次に、臨床試験と標準療法の関係について医師に確認してください。そして、臨床試験がどういう規模で、どういう目的で、どういうシステムで行われるか、詳しく説明を求めてください。そのうえで、ベネフィット(利点)とリスク(危険性)を考慮して判断するようにしましょう。

コラム 患者さんを支える人々の輪(チームA・B・Cの役割)

チーム医療は、患者さんを中心に3つのチームから成り立っていると考えてください。
この3つのチームが協力し合い、補うことで、患者さんは質の高い生活を維持しつつ、理解し納得のうえ、治療を進めていくことができるのです。

チームA

医学的治療チーム
医師・看護師・薬剤師 など

それぞれが専門性を発揮して、病気の治癒を目指し、患者さんを中心に連携して治療を行います。

チームB

支援チーム
臨床心理士・ソーシャルワーカー・栄養士・病院の患者図書館の司書 など

患者さんと会話し、適切なアドバイスをすることで患者さんの不安や心配を取り除いて、主体的な姿勢を引き出します。

チームC

社会的資源チーム
患者さんのご家族やご友人・研究者・メーカー・政府 など

患者さんのニーズを常に考慮し、闘病環境がベストになるように患者さんをサポートします。

コラム 患者さんの気持ちを知る(家族の役割)

ご家族には、医療でない領域の3つの大切なことができます。
患者さんの悩みは、多くの場合、回答がなく解決できない問題です。患者さんの抱えている問題点をご家族が認識するだけでも十分なサポートの一環といえるでしょう。ぜひ、それに気づいていただきたいと思います。

問題点を発見すること 患者さんの気持ちを認識すること 解決しない問題につきあうこと

大切なのは、患者さんに同意しながら患者さんの話を傾聴することです。例えば、患者さんがいらだっていたら、「いらだつんだね、それも無理はないよ」と受け止めましょう。そして、「どう思っているの?」と話を引き出す助けを出し、特に何も言わずに、話をよく聞きましょう。きっと、患者さんは、「ああ、私の気持ちをわかってくれるんだなあ」と喜びを感じることでしょう。

家族では対処できないほど問題が大きいと思ったら、チームB(臨床心理士、ソーシャルワーカーなどの支援チーム)などに助けを求めるのも、ご家族の大切な役割です。ご家族で抱え込もうとせずに、チーム医療の一員として、チームBと共に患者さんを支えていきましょう。

ご家族はまず、ご自分を大切にしてください。患者さんのためにご自身を犠牲にしたり、やりたいことをすべて我慢してはいけません。ご自身が元気なことが、患者さんを支えるチームとしての活力を維持するためにも重要です。