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乳がんの情報サイト

監修:
藤田久子
特定社会保険労務士・社会福祉士・キャリアコンサルタント

乳がんの治療にはお金がかかります。治療費、仕事や日常生活、介護など、さまざまな経済的な問題をひとりで抱え込むことはせず、公的な制度などを上手に活用し、負担を軽減していきましょう。

こんな困りごとはありませんか?

治療費の負担を軽くしたい。

  • 治療費が高額になり心配です。
  • 複数の病院を受診していてお薬代も高額になっています。
  • 申告していない過去の医療費があることに気づきました。など

収入の減少をカバーしたい。

  • 治療のために会社をしばらく休みます。無給になると生活が困ります。
  • 仕事や生活に支障が出てきました。
  • 働きながらでも障害年金は受け取れますか。など

治療費以外でかかるお金について知りたい。

  • 治療費以外では、どのようなことにお金がかかるのか知りたいです。
  • 病院の領収書にある「保険適用外」とはどういうことか知りたいです。
  • 今後の治療費のために家計を見直してみたいです。など

日常生活を支えてほしい。

  • 体力が低下して日常生活に支障が出てきました。
  • 通院が難しくなってきたので在宅医療を受けたいです。
  • 緩和ケア病棟と在宅緩和ケアの違いが知りたいです。 など

家族が利用できる制度などを知りたい。

  • 家族の付き添いのため仕事を休む必要が出てきました。
  • 家族のための社会保障制度が知りたいです。
  • 介護をしています。自分の時間を持ちたいのですが家を空けるのが心配です。など

1)このサイトの情報は、2020年12月1日現在のものです。
2)このサイトで「健康保険等」と表記されているのは、公的医療保険のことです。
健康保険組合、全国健康保険協会(協会けんぽ)、船員保険、共済組合、国民健康保険を指しています。
また、「健康保険」と表記している場合は、国民健康保険以外を指しています。

治療費の負担を軽くしたい

Q1. 治療費が高額になり心配です。治療費の負担を軽減するために利用できる制度はありますか。

Q2. 高額な治療費を支払えるか心配です。窓口の支払いを抑える仕組みはありませんか?

Q3. 治療費はどのくらいかかりますか。乳がん患者に対する特別な支援制度はありますか。

Q4. 複数の病院を受診しています。お薬代も高額になりますが負担を軽くする方法はありますか。

Q5. 高額療養費でカバーできない治療費の負担を軽くするために利用できる制度はありますか。

Q6. 医療費控除の「対象になるもの」と「対象にならないもの」を教えてください。

Q7. ドラッグストアで「セルフメディケーション税制」の案内を見ました。これはどういうものですか。

Q8. 申告していない過去の医療費があることに気づきました。これから申請できますか。

収入の減少をカバーしたい

Q1. 治療のため会社をしばらく休むことになりました。無給になると生活が困りますがどうしたらよいですか。

Q2. 傷病手当金は誰が、どのくらいもらえますか。また、受給の条件や申請先を教えてください。

Q3. 一度傷病手当金を受給した後に復職しました。再度休む場合にももらえますか?

Q4. 退職後も傷病手当金はもらえますか。

Q5. 仕事や生活に支障が出てきました。生活保障を受けるための制度はありますか。

Q6. 障害年金は誰がもらえるのですか? 受給の条件があれば教えてください。

Q7. どのくらいもらえますか。どこに申請すればよいですか。

Q8. 働きながらでも障害年金は受けとれますか。

治療費以外でかかるお金

Q1. 治療費以外では、どのようなことにお金がかかりますか。

Q2. 病院の領収書にある「保険適用外」とはどういうことですか。

Q3. 今後の治療費のために家計を見直してみたいと思います。どこから見直せばよいでしょうか。

日常生活を支えてほしい

Q1. 母が乳がんの手術後、体力が低下して独りで生活するのが難しくなったので、介護保険サービスを利用したいと思っています。手続きはどうすればよいですか。さらに毎月の費用はどのくらいかかるのでしょうか。

Q2. まだ50代ですが日常生活の介助が必要になってきました。介護保険制度は使えますか。どのタイミングで手続きをすればよいでしょうか。

Q3. どのようなサービスが受けられますか。介護サービスを利用すると、がん治療はもう受けられませんか。

Q4. 緩和ケア病棟と在宅緩和ケアの違いが知りたいです。

Q5. 介護サービスを利用するメリットを教えてください。

家族が利用できる制度

Q1. 母は高齢で体調もよくないため、通院に付き添いたいのですが、仕事でなかなか休みがとれません。家族のための社会保障制度は何かありますか。

Q2. 自宅で看取る場合と、緩和ケア病棟(ホスピス)に入院させた場合、それぞれどのくらい費用がかかりますか。

Q3. 介護が続いています。自分の時間を少し持ちたいのですが、家を空けるのは心配です。どうしたらよいでしょうか。

治療費の負担を軽くしたい

Q1. 治療費が高額になり心配です。治療費の負担を軽減するために利用できる制度はありますか。

「高額療養費制度」など医療費の負担を軽減する支援制度があります。治療費で困ったことがあれば病院のメディカル・ソーシャルワーカー(MSW)や加入されている健康保険等の担当窓口等に相談・確認しましょう。

窓口でどのくらいの支払いがあるか、心配になりますよね。
しかし、日本では、健康保険証を提示すれば、医療費の3割が自己負担となります。さらに、高額療養費制度があるので、その3割分のうち、一定額以上は負担を抑えられる仕組みがあります。

* 70歳以上の方は、所得により2割~3割負担となります(75歳以上は1割又は3割)。

「高額療養費制度」は、「自己負担限度額」を超えた部分も健康保険等が負担する仕組みです。この「自己負担限度額」は、所得などによって金額が異なってきます。例えば、69歳以下の方で、年収約370万円(標準報酬月額26万円以下)の方の場合は、1か月の自己負担限度額は、5万7600円です。つまり、どんなに医療費がかかっても、健康保険適用の診療に対する自己負担は、この金額で済むということです。

<例> 69歳以下・年収約370万円(標準報酬月額26万円以下)の方の場合

<例> 69歳以下・年収約370万円(標準報酬月額26万円以下)の方の場合

この「自己負担限度額」は、年齢と所得によって異なりますので、加入されている健康保険等に確認するか、病院のメディカル・ソーシャルワーカー(MSW)等に相談してみるとよいでしょう。
下記のリンクには制度についての説明が詳しく掲載されています。
併せて参考にしてください。

リンク
医療費を軽減できる制度を知りたいのなら
厚生労働省「高額療養費制度を利用される皆さまへ」

Q2. 高額な治療費を支払えるか心配です。窓口の支払いを抑える仕組みはありませんか?

「限度額適用認定証」を利用すれば窓口の支払いは、「自己負担限度額」(「治療費の負担を軽くしたい」Q1参照)で済みます。

入院や手術など、高額な医療費がかかることが事前に予想できる場合、健康保険等から「限度額適用認定証」を交付してもらうことで、窓口での負担を「自己負担限度額」までに抑えることができます。

<例> 69歳以下・年収約370万円(標準報酬月額26万円以下)の方が入院等の高額な医療費がかかる場合

<例> 69歳以下・年収約370万円(標準報酬月額26万円以下)の方が入院等の高額な医療費がかかる場合

「限度額適用認定証」の交付は、加入されている健康保険等にお問い合わせください。ご本人でなくても、ご家族や会社の担当者でも申請が可能な場合があります。

リンク
医療費を軽減できる制度を知りたいのなら
厚生労働省「高額療養費制度を利用される皆さまへ」

Q3. 治療費はどのくらいかかりますか。乳がん患者に対する特別な支援制度はありますか。

治療費は病期や治療内容によって異なります。経済的な問題は、病院のメディカル・ソーシャルワーカー(MSW)、「相談支援センター」等に相談・確認しましょう。

治療費は乳がんの病期(ステージ)や治療内容によって異なります。しかし、「治療費の負担を軽くしたい」Q1でお伝えしたように、健康保険証を窓口に提出して受診し、高額療養費制度を利用すれば、1か月の治療費はその方の所得に応じた「自己負担限度額」までの治療費となります。
乳がんの患者さんを対象にした特別な支援制度はありません。ただし、自治体によっては、治療で購入する「ウィッグ」の購入費用に対する助成制度がある場合がありますので、お住まいの自治体に確認してみましょう。

治療費について心配なことがあれば、病院のメディカル・ソーシャルワーカー(MSW)等に相談しましょう。MSWは病院の医療相談室またはがん診療連携拠点病院の相談支援センターで活動しています。相談支援センターでは、その病院にかかっていない患者さんやご家族の相談にも電話や面談で応じています。

リンク
がん相談支援センターについて確認したいなら
がん情報サービス「がん相談支援センターとは」

Q4. 複数の病院を受診しています。お薬代も高額になりますが負担を軽くする方法はありますか。

高額療養費制度には、「世帯合算」「多数回該当」という仕組みがあります。また確定申告の「医療費控除」を行うことにより、所得税の還付が受けられる場合があります。

複数の病院を受診している場合で治療費が高額になる場合、高額療養費制度の「世帯合算」という仕組みを使うことができるかもしれません。

通常、1つの医療機関で、1か月(1日から月末まで)の間にその方の「自己負担限度額」を超える治療費を支払った場合、その超えた部分が「高額療養費」として支払われます。

「世帯合算」は、1か月に2万1000円以上支払いをした医療機関が複数ある場合に、「合算」して、「自己負担限度額」を超える場合に、その分を高額療養費として支給するという制度です。

<例> 70歳未満・年収約370万円(標準報酬月額26万円以下)の方で、1か月の自己負担額が次のような場合

<例> 70歳未満・年収約370万円(標準報酬月額26万円以下)の方で、1か月の自己負担額が次のような場合

3万円+5万円-(自己負担限度額) 5万7600円 = 2万2400円
・・・2万2400円が「高額療養費」として戻ってくる。
(C病院の1万円は、2万1000円以上かかっていないので、合算の対象外)

また、高額療養費制度には「多数回該当」と言って毎月の支払いが高額となる月が12か月間で4回以上となる場合、負担が軽減される制度もあります。さらに、1年間の間の医療費の最終的な自己負担額が高額となった場合、確定申告で「医療費控除」を受けられる場合があります。確定申告については、「治療費の負担を軽くしたい」Q5をご覧ください。

リンク
医療費を軽減できる制度を知りたいのなら
厚生労働省「高額療養費制度を利用される皆さまへ」

Q5. 高額療養費でカバーできない治療費の負担を軽くするために利用できる制度はありますか。

「医療費控除」という仕組みがあります。確定申告で、1年間にかかった医療費を申告することにより、納めすぎた所得税を戻してもらう(還付)仕組みです。 医療費の自己負担分や自費診療、保険適用外の治療費が多くかかった場合などに利用することができます。

サラリーマンの方は、通常、会社が毎月の給与から所得税などの税金を天引きして本人に代わって納めています。そして、「年末調整」を行うことで、所得税を調整しています。

高額な医療費がかかった場合、この「年末調整」では調整できず、自分で「確定申告」を行う必要があります。申告を行うことで、納めすぎた所得税が戻ってきます。

医療費控除の対象となる医療費は、その方の所得によって異なります。総所得金額等が200万円以上の方は、医療費が10万を超えた場合、200万円未満の方は、年間に支払った正味の医療費が総所得銀額の5%以上の場合に対象となります。

確定申告でいう「医療費」は、健康保険等の適用でない部分も対象になります(「治療費の負担を軽くしたい」Q6参照)。また、本人分だけでなく家族の分をまとめて申告できるので、所得が多い方で申告するのがおすすめです。

Q6. 医療費控除の「対象になるもの」と「対象にならないもの」を教えてください。

「医療費控除」の対象は、「治療に必要とした費用で、一般的に支出される水準を超えない部分の金額」とされています。健康保険等の適用があるかどうかは関係ありません。通院時に利用した公共交通機関の交通費等も対象になります。

「治療に要した費用」「一般的に支払いが必要なもの」というところがポイントです。「予防的なもの」「健康維持のためのもの」は対象となりません。主なものを挙げてみます。

●医療費控除の対象となるもの・ならないもの

●医療費控除の対象となるもの・ならないもの

とくに申告で忘れがちなのが、通院にかかる電車やバス代などです。電車やバス代は、領収証がなくても申告できます。「これは該当するの?」と疑問に思うものが出てきた場合は、お住まいの居住地を管轄する税務署に問い合わせてみましょう。国税庁のホームページでもある程度調べることができます。

リンク
医療費控除全般を知りたいのなら
国税庁「医療費を支払ったとき(医療費控除)」

医療費控除の対象となる医療費を調べたいのなら
国税庁「医療費控除の対象となる医療費」

Q7. ドラッグストアで「セルフメディケーション税制」の案内を見ました。これはどういうものですか。

スイッチOTC医薬品*の購入費用について、所得控除を受けられる仕組みです。年間のスイッチOTC医薬品の合計額が1万2000円を超える場合、超える金額について確定申告を行います。

医療費控除では、医療費が10万円以上又は所得の5%以上かかった場合、と高額な治療費が対象となっていました。そこまでの支払いがない場合でも、セルフメディケーション税制の対象となる医薬品の支払いが1万2000円を超える場合は、確定申告を行うことで、所得税控除が受けられます(控除限度額8万8000円)。

対象となる医薬品の薬効の例としては、風邪薬、胃腸薬、鼻炎用内服薬、肩こり・腰痛・関節痛のシップ薬などがあげられます。対象かどうかの見分け方としては、関係団体の自主的な取り組みとして、対象商品の外箱やドラッグストアのレシートなどに識別マークや印がつけられています。

* これまで処方箋による指示によって購入できた医薬品のうち、薬局やドラッグストアなどで処方箋がなくても購入できるように「スイッチ」した医薬品のことを指します。

リンク
セルフメディケーション税制について知りたいのなら
国税庁「セルフメディケーション税制の対象となる一般用医療品購入品」

Q8. 申告していない過去の医療費があることに気づきました。これから申請できますか。

確定申告は年ごと(1月から12月)に行います。申告していない過去の医療費はその過去の年分として申告します。還付申告だけの場合は、5年間申告することができます。

確定申告は、年ごとに行うのが決まりです(例:令和2年1月~12月分)。したがって、その年以前にかかった医療費は、過去の年分として申告することはできます。

通常の確定申告期間は、通常、翌年の2月中旬から3月15日くらいまでですが、還付申告(納めすぎた所得税を戻すための申告)だけの場合は、翌年の1月1日から5年間申告することができます。

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還付申告について知りたいのなら
国税庁「還付申告」

収入の減少をカバーしたい

Q1. 治療のため会社をしばらく休むことになりました。無給になると生活が困りますがどうしたらよいですか。

まず、会社の働くときのルール(就業規則など)を確認しましょう。会社で年次有給休暇以外の休暇など使える制度はないでしょうか。多くの企業では、病気により一定期間休業する場合、「休職」となる制度がありますが、無給となることが多いです。その場合は、加入している健康保険等から「傷病手当金」が支給される場合があります。

病気やけがにより会社を休み療養する場合に利用したいのが「傷病手当金」です。傷病手当金は、お勤めしている本人が病気やけがで療養しているときに受けられる制度です。傷病手当金についての詳細は、「収⼊の減少をカバーしたい」Q2をご覧ください。
また、お勤めの会社によっては、年次有給休暇とは別に、「病気休暇」などの名称で有給休暇を用意しているところもあります。診断を受けて治療の予定がある程度決まってきたら、一度会社に問い合わせ・相談してみましょう。

リンク
傷病手当金のことを知りたいなら
協会けんぽ「病気やケガで会社を休んだとき」
*ご自身が加入されている健康保険等のホームページも参照ください。

Q2. 傷病手当金は誰が、どのくらいもらえますか。また、受給の条件や申請先を教えてください。

会社を休んでいる本人が受けられる制度です。加入している健康保険から支給されます。支給されるのは、おおよそ給与の3分の2で、支給開始から1年6か月の間、会社を休んで療養している間支給されます。

傷病手当金はお勤めしている本人が病気やけがで療養しているときに受けられる制度です。傷病手当金は、次の4つの条件にすべて当てはまる場合に、その方が加入している健康保険から支給されます。

①(業務上や通勤災害でない)病気やけがにより療養していること
②働けない状態であること(労務不能)
③連続して3日以上会社を休み、その後も休んでいること
④給与(報酬)の支払いがない、または、傷病手当金の金額より少額となっていること。

療養している期間に対して、療養開始4日目(待期期間終了後)から支給されます。支給される金額は、支給開始される日以前の12か月間の「標準報酬月額」(給与額を区切りのよい幅で区分したもの)を平均して計算されます。おおよそ給与の3分の2と思ってください。支給開始から1年6か月の間に会社をお休みしている期間が支給対象となります。

リンク
傷病手当金のことを知りたいなら
協会けんぽ「病気やケガで会社を休んだとき」
*ご自身が加入されている健康保険等のホームページも参照ください。

Q3. 一度傷病手当金を受給した後に復職しました。再度休む場合にももらえますか?

最初に傷病手当金の支給が開始した日から1年6か月の間に一旦復職し、同じ病気やけがで再び休む場合は、最初に傷病手当金が支給された日から1年6か月経過するまでの間であれば支給されます。復職後、相当期間を経過して再度休む場合は、「社会的治癒」と認められて再度1年6か月支給される場合があります。

傷病手当金は同じ傷病につき、その傷病手当金が支給された日から1年6か月間のうち、仕事ができず、療養している期間支給されます。

療養後、仕事ができるようになって復職してから、再び休んで療養する場合、傷病手当金を最初に受けたときから1年6か月の間であれば、再度傷病手当金が受給できます。

療養後、仕事ができるようになって復職してから、再び休んで療養する場合、傷病手当金を最初に受けたときから1年6か月の間であれば、再度傷病手当金が受給できます。

乳がんのような病気は、治療が終わってから何年も経ってから、再発することがあります。その場合は、傷病手当金の支給はどうなるでしょうか?

本来的には、「同一傷病につき1年6か月」という原則で、最初の支給開始から1年6か月以降に休業したとしても支給の対象になりません。しかし、乳がんのような病気をこのルールに当てはめると、再度療養が必要なときに傷病手当金が受給できないということになってしまいます。そこで、健康保険等では、「社会的治癒」という考え方を取り入れています。「社会的治癒」とは、復職して相当期間通常通り勤務しているような場合は、医学的には同一傷病であっても、一旦「社会的に治癒したとみなして、便宜上別の疾病として取り扱うことで再度傷病手当金を支給するものです。

ただし、この「社会的治癒」を判断するのはあくまでも加入している健康保険となります。詳しく事情を説明して、加入している健康保険に確認してみましょう。

Q4. 退職後も傷病手当金はもらえますか。

条件を満たせば、引き続き受けられます。

「退職したら傷病手当金が受けられなくなる」と思っている方は非常に多いです。また、「退職後、健康保険を任意継続加入しなければ傷病手当金が受けられなくなる」、という誤解も多いです。

退職後に引き続き傷病手当金が受けられる条件は次の3つです。

資格喪失日の前日(退職日等)に
①1年以上継続して被保険者期間があること
②傷病手当金を現に受けているか、受けられること
③退職日時点で現に休んでいること
にすべて該当している場合は、支給開始から1年6か月までの期間で、支給されます。

上記の条件に合致しているかどうか、は加入している健康保険等や会社に確認してみましょう。
なお、「健康保険の任意継続加入」というのは、退職後も引き続きこれまで加入している健康保険に加入し続けるという制度です。退職前は保険料を会社と本人で折半(2分の1)していたものが、本人全額の支払いとなります。退職後20日以内にこれまで加入していた健康保険等に申し出て手続きを行います。

傷病手当金は、この任意継続加入する・しないとは関係なく、冒頭の3つの条件で支給されますので、任意継続ではなく、国民健康保険に加入したとしても受給は可能です。
なお、健康保険の任意継続加入は、退職後すぐに国民健康保険に加入するよりは保険料が安くなる場合や、加入されている健康保険によっては、法律で定めた以上の給付(付加給付)が受けられる場合があります。退職後の保険の選択にあたっては、保険料の比較や給付内容の比較などを行って慎重に行いましょう。任意継続の保険料については、これまで加入していた健康保険で確認できますし、国民健康保険料はお住まいの市区町村の国民健康保険の担当課で試算してもらえます。

Q5. 仕事や生活に支障が出てきました。生活保障を受けるための制度はありますか。

病気等により仕事や生活に支障が出てきた場合、公的な年金制度では、「障害年金」が受給できる場合があります。「乳がん」の場合も受給できる場合があります。

障害年金は、病気やけがにより生活や仕事などが制限される場合に受け取ることができる年金です。障害の原因となった病気やけがではじめて医師などの診療を受けた日(初診日)から基本的に1年6か月経過した時点で、一定の「障害状態」と認められる場合、初診日に加入している公的年金制度から障害年金が支給されます。

この障害年金は、「障害者手帳」とは全く別の制度です。障害年金での障害等級は、初診日において厚生年金に加入していた場合は、1~3級まで、初診日において国民年金に加入していた場合は、1・2級までに該当した場合に支給されます。

リンク
障害年金制度を知りたいのなら
日本年金機構「公的年金制度・請求手続きについて」

Q6. 障害年金は誰がもらえるのですか? 受給の条件があれば教えてください。

障害年金を受けるには次の3つの条件をすべて満たすことが必要です。

①障害の原因となった病気やけがの初診日に国民年金又は厚生年金に加入していること
②障害の状態が、障害認定日(一般的に初診日から1年6か月経過した日)に障害等級1級~3級(国民年金の場合は、1・2級)に該当していること
③保険料の納付が一定程度あること(「納付要件」を満たしていること)
3つの条件を順番に説明していきます。
①でいう「初診日」とは、その病気やけがで初めて医師の診療を受けた日です。例えば市区町村の健診等で「要精密検査」と結果が出て、病院に受診した場合、その病院に受診した日が「初診日」となります。
②初診日から1年6か月を経過した時点において、障害等級に該当するような「障害の状態」にあるかどうかです。「障害の状態」とは、いわゆる「心身に障害がある状態」ばかりではなく、治療の副作用等によってまひが残ったり、副作用により倦怠感等が出て生活や仕事に支障がある場合も該当する場合も含まれます。
③初診日がある月の2か月前までの年金に加入している期間のうち、3分の1以上保険料が「未納」となっていないこと、が必要です(ただし、2026年4月1日以前に初診日がある場合は、初診日がある月の2か月前以前の直近1年間に未納期間がなければOKです)。

リンク
障害年金の受給要件について知りたいのなら
日本年金機構「障害厚生年金(厚生年金)の受給要件」
日本年金機構「障害基礎年金(国民年金)の受給要件」

Q7. どのくらいもらえますか。どこに申請すればよいですか。

初診日が国民年金の場合は、障害年金(障害基礎年金)は定額となります。
(令和2年度:1級 977,125円  2級 781,700円  20歳未満の子*1がいる場合は「加給年金」が加算されます。)
初診日が厚生年金の場合は、障害年金(障害厚生年金)は、その方のこれまでの報酬によります(令和2年度最低保障額 3級 586,300円、また、生計を共にしている65歳未満の配偶者がいる場合は、「加給年金」*2が加算されます)。

障害年金の申請先は、初診日が厚生年金の場合は、年金事務所です。初診日が国民年金の場合は、お住まいの市区町村の国民年金の窓口か年金事務所となります。

年金事務所や「街角の年金相談センター」では、年金額の試算等の相談に応じてくれますので、問い合わせしてみましょう。

*1 生計を維持している高校生までの子または、障害状態にある20歳未満の子
*2 加給年金額  令和2年度 1人当たり224,900円 (年間)ただし、3人目以降の子は75,000円

リンク
年金について相談したいなら
日本年金機構 「全国の相談・手続き窓口」

Q8. 働きながらでも障害年金は受けとれますか。

障害年金は病気等により仕事や生活に支障が出てきた場合に給付される制度です。働いているから受け取れない、という制度ではありません。仕事や生活に支障がある場合、その程度によって障害年金が受給できます。

「働きながらだと障害年金は受けられない」という誤解は根強いです。ただし、障害年金は、初診日において加入していた制度(厚生年金か国民年金か)によって給付条件が異なります。初診日が国民年金の場合、障害等級は1・2級でなければ受給できないので、3級相当であっても障害年金の該当にならないということになります。

また、初診日が厚生年金の場合、障害等級は3級まであるので、短時間勤務などで働き方を調整しながら障害年金を受給されている方もいらっしゃいます。

障害年金はさまざまな傷病の種類にかかわらず支給されますが、それぞれの傷病に対し、「認定基準」が設けられ、それに沿って障害等級の認定が行われます。

がんの場合では、眼や聴覚などの具体的な数値で障害状態が確認できる障害とは異なっており、数値等では障害の状態がわからない場合も多々あります。そのため、働いているという事実で、障害認定の判断が厳しくなることもあります。したがって、申請にあたっては、仕事や生活にどのくらい支障が出て、どんな困りごとがあるのかを具体的にしっかり説明していく必要があります。
なお、障害年金は老齢年金とは異なり、仕事をしているからと言って支給が停止することはありません*。

* 20歳前の傷病により国民年金の障害基礎年金を受けている場合は、年金の保険料を納付していないということから所得の金額によって全額又は半額の年金が支給停止となることがあります。

リンク
がんに関する障害年金の認定基準について確認したいなら
日本年金機構「障害認定基準 第16節悪性新生物による障害」

治療費以外でかかるお金

Q1. 治療費以外では、どのようなことにお金がかかりますか。

入院時の食事料、希望して利用する個室代(差額ベッド代)、使用するパジャマや洗面用具、テレビや冷蔵庫代など、お見舞いのお返しやお礼代、診断書作成料、下着、洋服、治療によっては脱毛することがあり、ウィッグの用意が必要となる場合があります。

治療費の他にさまざまな出費があります。入院する場合は、食事代、希望して利用する個室代などの他にテレビや冷蔵庫等の利用料、パジャマや洗面用具代などがかかります。

通院する場合には、通院にかかる交通費や、保険の請求に必要な診断書の作成料、手術後は脱着しやすい下着や洋服なども必要になってくるかもしれません。また、治療によっては脱毛するので、ウィッグの購入が必要となる場合もあります。こうした費用は、基本的に健康保険等の対象になりませんので(「保険適用外」)、自分で全額支払う必要があります(自費)。

ウィッグや、若年がん患者さんの妊孕性(にんようせい)温存治療に必要な費用については、自治体によっては助成制度がある場合があります。お住まいの市区町村等で確認してみましょう。

Q2. 病院の領収書にある「保険適用外」とはどういうことですか。

健康保険等の適用にならない、全額自己負担となる費用のことです。入院時の食事料や、民間保険の診断書などの文書作成料、自分の希望で利用する個室代(差額ベッド代)などが該当します。

病院や薬局の領収証を見ると、「保険診療」「保険適用外」といった区分けがされていると思います。「保険診療」は、加入している健康保険等がその費用を一部(70歳未満の方は原則7割)負担し、残りを患者本人が支払います。

一方、「保険適用外」は、いくら高額であっても、健康保険等でカバーはしないので、全額、患者本人が支払います(自費)。

保険適用外の部分で、医療費控除の対象となるものがあれば、確定申告をすることで、かかった負担を軽減することができます。(確定申告については「治療費の負担を軽くしたい」Q5参照)

Q3. 今後の治療費のために家計を見直してみたいと思います。どこから見直せばよいでしょうか。

現在の家計を「見える化」してみましょう。毎月どのくらいのお金が入り(収入)、支払って(支出)いるでしょうか。家計の見直しをする場合、一般的に、固定費(毎月決まってかかる費用)を見直すと効果が高いと言われています。

がんの治療はお金がかかります。治療が長引くこともあり、長期的に支出が増えることで家計の見直しが必要になってくる場合もあるかもしれません。

まずは、毎月どのくらいの収入・支出があるのかを知ることから始めてみましょう。大まかでもいいので、家計簿をつけてみるのも方法です。見直しが必要な場合は、携帯電話代や住宅ローン、民間の保険等、毎月決まった費用(「固定費」)を見直すことができないか検討してみましょう。FP(ファイナンシャルプランナー)などの専門家のアドバイスを受けることも有益かもしれません。

日常生活を支えてほしい

Q1. 母が乳がんの手術後、体力が低下して独りで生活するのが難しくなったので、介護保険サービスを利用したいと思っています。手続きはどうすればよいですか。さらに毎月の費用はどのくらいかかるのでしょうか。

お母さまがお住まいの市区町村の介護保険担当の窓口または地域包括支援センターに問い合わせ・相談してみましょう。毎月かかる費用は、お母さまの所得や要介護状態、どのくらい介護サービスを利用するかによって異なってきます。

介護保険サービスを利用するには、お住まいの市区町村への申請がまず必要です。介護保険の申請書に、65歳以上の人は介護保険証(65歳未満の方は健康保険証)と個人番号(マイナンバー)確認書類等を添えて市区町村の介護保険担当課または地域包括支援センターに提出します。

その後、市区町村から派遣された認定調査員が家庭を訪問し、介護サービス利用者の心身の状態や日常生活の状況に関する聞き取り調査が行われます。同時に市区町村の担当課では主治医(病院の担当医または地域のかかりつけ医)に意見書の作成を依頼し、後日それらの資料をもとに要介護認定の審査が行われ、要介護度が判定されます。通常30日以内に決定されることとなっています。

判定は、「要支援1・2」、「要介護1~5」の認定の7区分と「非該当」のいずれかとなります。「要支援」または「要介護」と認定された場合は、その区分に応じて介護保険で受けられる介護サービスの量が決められています。要介護認定の区分が決定すれば、ケアプラン(居宅支援サービス計画書)を作成することになりますが、要支援1・2と認定された人は地域包括支援センターでプランを組むことになります。一方、要介護1~5に認定された人は、地域の居宅介護支援事業所に所属するケアマネジャー(介護支援専門員)の中から、利用者や家族が自由に選んだケアマネジャーと相談しながらケアプランを組んでいくことになります。

介護保険のサービスを利用したときには、その方の年齢と所得に応じてサービス費の1~3割を支払います(利用者が65歳以上場合は、利用者本人と同じ世帯にいる65歳以上の方の所得に応じて、65歳未満の方は、1割負担です)。

介護保険についてわからないことがあれば、治療を受けている病院もしくはがん診療連携拠点病院に設置されている相談支援センターのメディカル・ソーシャルワーカー(MSW)に相談しましょう。がん相談支援センターでは、地域の患者さんやご家族からの相談も受け付けています。

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がん相談支援センターについて確認したいなら
がん情報サービス「がん相談支援センターとは」

Q2. まだ50代ですが日常生活の介助が必要になってきました。介護保険制度は使えますか。どのタイミングで手続きをすればよいでしょうか。

65歳未満の方の場合は、特定疾病に該当し、介護が必要になった場合、介護保険制度を利用することができます。がんの場合は、「医師が一般的に認められている医学的知見に基づき回復の見込みがない状態に至ったと判断したもの」という条件で介護保険制度が使えます。

介護保険は65歳以上の方であれば、介護状態となった場合に無条件で適用となりますが、65歳未満の方の場合は、「特定疾病」と呼ばれる、加齢に伴って生じる心身の変化に起因する疾病のときに対象となります。がんの場合は、「がんになっている」というだけではなく、「医師が一般的に認められている医学的知見に基づき回復の見込みがない状態に至ったと判断したもの」という条件に当てはまる場合に利用できます。

まずは、治療を受けている病院もしくはがん診療連携拠点病院に設置されている相談支援センターのメディカル・ソーシャルワーカー(MSW)に相談しましょう。相談支援センターでは、地域の患者さんやご家族からの相談も受け付けています。

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Q3. どのようなサービスが受けられますか。介護サービスを利用すると、がん治療はもう受けられませんか。

介護サービスを受けることで、がん治療を受けることができなくなることはありません。介護サービスと治療を併用して受けることができます。

介護サービスと医療サービスはそれぞれ目的が違います。したがって、介護サービスを受けているからといって、医療サービスである治療を受けられなくなることはありません。介護保険サービスを担当するのは、介護保険です。一方、治療を受ける際に利用しているのは、健康保険です。それぞれのサービスを必要に応じて利用していきましょう。

介護サービスは、在宅でのサービスと施設サービス、そのほかいろいろな種類のサービスがあり、認定された介護状態の度合いによって利用できる範囲が異なります。どんなサービスが受けられるかは、お住まいの地域包括支援センターなどに問い合わせしてみましょう。

<対象サービスの例>

訪問介護…ホームヘルパーが自宅を訪問、身体介護や生活援助をするサービス
訪問看護…訪問看護ステーションなどの看護師などが自宅を訪問、主治医の指示のもと、病状の確認や手当等をするサービス
居宅療養管理指導…医師、歯科医師、薬剤師、歯科衛生士などが訪問し、療養上の管理・指導を受けるサービス
福祉用具貸与…手すり・スロープ・歩行器・車椅子などのレンタル
福祉用具購入…腰かけ便座、入浴補助用具などの購入
通所介護・通所介護相当サービス…デイサービスなどで食事・入浴などを日帰りで利用するサービス

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介護保険制度の手続きやサービスについて知りたいのなら
厚生労働省「介護事業所・生活関連情報検索――介護サービス情報公表システム」
*各都道府県・市区町村で同様のホームページがあると思いますので、お住まいの住所地のホームページもご確認ください。

Q4. 緩和ケア病棟と在宅緩和ケアの違いが知りたいです。

日常を病院内で過ごすか、自宅で過ごすかが一番大きな違いです。以前は緩和ケア病棟(ホスピス)は、「人生の最期を迎えるところ」と考えられてきましたが、現在は、「緩和ケアを専門的に受けるために利用するところ」となっています。

昔は「緩和ケア」というと、治療が終了し、人生の最終段階を迎える際のケア、と捉えられてきました。また、「緩和ケア病棟」(ホスピス)と言えば、人生の最期を迎える場所(看取りの場)と考えられてきました。

しかし、現在は、「緩和ケア」は、「命をおびやかす病気に直面している患者とその家族に対するケア」と意味を変え、それに伴い、「緩和ケア」を受ける場所も、以前の「ホスピス」だけでなく、外来通院時、そして、一般病棟に入院した場合も受けるものとなっています。

ご質問の「緩和ケア病棟」と在宅医療の違いですが、それぞれメリットとデメリットがあります。意思決定に関しては、いずれの方法を選択した場合でも、状況に応じて変更することは可能です。在宅緩和ケアを受けながら、苦痛症状が強いときには、「緩和ケア病棟」を利用し、緩和できたら在宅に切り替える、ということも行われてきていますので、まずはかかりつけの病院の医師や看護師、MSWなどに相談してみましょう。

「緩和ケア病棟」「在宅緩和ケア」

Q5. 介護サービスを利用するメリットを教えてください。

介護サービスを利用することで、その人らしく質の高い日常生活を送ることをサポートしてもらえる、介護する人の負担を減らすことができることなどが挙げられます。また、介護保険に基づく介護サービスを受ける場合、介護にかかる費用やサービスを全額ではなく一部(1割~3割)負担することによって利用することができることもメリットです。

介護保険制度ができる前は、介護は「家族が行うもの」と一般的に思われてきました。
しかし、高齢化が進む今、介護は「だれもが直面する問題」となっています。このため、皆で保険料を出し合って支えていこうということで生まれた制度が「介護保険制度」です。

介護保険を利用するには、介護認定を受ける必要があります(「日常生活を支えてほしい」Q1参照)。
がんの場合は、急激に状態が悪くなる場合もあるので、心配なことは早め早めに情報を収集したり、病院や地域の相談窓口などで相談しましょう。

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がん情報サービス「がん相談支援センターとは」

家族が利用できる制度

Q1. 母は高齢で体調もよくないため、通院に付き添いたいのですが、仕事でなかなか休みがとれません。家族のための社会保障制度は何かありますか。

勤めている方の場合、介護休業や介護休暇を取得することができます。また、雇用保険から介護休業期間中については介護休業給付金が受けられます。

介護が必要となった場合使うことができる主な制度としては、「介護休業」「介護休暇」があります。介護休業は、要介護状態にある家族を介護するためにまとまったお休みを取る場合に、93日取得できます(最大3回に分けることが可能)。また、介護休業期間に勤務先の給与が出ない場合、雇用保険から「介護休業給付金」が支給されます。休業開始時賃金日額*の67%で、最大93日支給されます。介護休業給付金の手続き先は、勤務地を管轄するハローワークです。

このほかに、「介護休暇」が対象家族1人につき5日取得できます(2021年1月から時間単位での取得が可能となります)。また、介護期間中の残業免除や深夜業を制限する制度なども用意されています。

介護休業や介護休暇については、まずは事情を説明して勤務先に取得方法を確認してみましょう。会社によっては、「仕事と介護の両立」を図る観点から、会社独自の介護休暇制度を独自に拡充している場合もあります。いっぽうで、介護休業や介護休暇を利用する際のトラブルなどについては、各都道府県の労働局で対応していますので、相談してみましょう。

* 原則として、介護休業開始前6か月間の賃金の支給額を180で割った額です。

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介護休業などの制度について確認したいなら
厚生労働省「育児・介護休業制度ガイドブック」

介護休業給付について確認したいなら
厚生労働省「介護休業給付」

介護休業などの制度とトラブルの際の相談先
厚生労働省労働局雇用環境・均等部(室)

Q2. 自宅で看取る場合と、緩和ケア病棟(ホスピス)に入院させた場合、それぞれどのくらい費用がかかりますか。

状況によってさまざまです。具体的な費用については、病院の医療ソーシャルワーカー(MSW)やがん相談支援センターなどに尋ねてみましょう。

緩和ケア病棟の場合は、健康保険等が使えますので、一般病棟同様に自己負担は年齢により1~3割負担です。さらに、自己負担分も高額療養費として戻ってきますので、健康保険等の適用部分は、自己負担限度額で済みます(「治療費の負担を軽くしたい」Q1参照)。

ただし、差額ベッド代などは、全額自己負担(自費)となるため、病院によって異なります。緩和ケア病棟がある病院では、利用料金等が記載されたパンフレットを用意されていることが多いので、確認してみましょう。

いっぽう、在宅での看取りの場合も、訪問診療については健康保険等が使えますので、緩和ケア病棟利用と同様に、自己負担額は、年齢により1~3割負担となり、高額療養の取り扱いも同様です。また、自宅での看取り期には、手厚い介護も必要となることから介護保険も同時に利用していくことになります。

介護保険と医療保険(健康保険等)の支払いが1年間に一定限度を超える場合、「高額介護合算療養費」という制度により、かかったお金の一部を払い戻しする制度もあります。こうした制度を組み合わせて費用負担の軽減をはかりましょう。

Q3. 介護が続いています。自分の時間を少し持ちたいのですが、家を空けるのは心配です。どうしたらよいでしょうか。

在宅での介護を担うご家族が日々の介護に疲れを感じて、介護力の限界を超え介護不能となることなどを予防するための入院を「レスパイト入院」と言います。こうしたレスパイト入院を利用するのも選択肢のひとつです。

日々の介護は家族に負担をかけることになることが多いです。しかし、ときには、「自分の時間を持ちたい」「たまには息抜きがしたい」と思うことも当然ですし、生活している以上、介護する家族自身の病気、出産、冠婚葬祭への出席などもあることでしょう。そうしたときに選択肢となるのが、「レスパイト入院」です。在宅で療養中の方を短期間入院で対応するという制度です。入院期間は「1~2週間」としている病院が多いです。

まずは、日頃利用されている介護事業所のケアマネージャーや、訪問診療所、訪問看護ステーションなどに相談してみましょう。

介護を続けていくときに大切なのは、決して「自分(たち)だけで抱え込まないこと」。さまざまなサービスが世の中には存在していますので、そうした情報とサービスをうまく使っていきましょう。それが、介護を担っている家族の方だけでなく、(介護を受けている)患者さん自身の心と身体にも良い影響となるかもしれません。