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乳がんの情報サイト

監修:
聖路加国際病院 乳腺外科部長・ブレストセンター長
山内 英子 先生

乳がんを治療していく上で、日常生活にもいろいろな影響が出てきます。
家事や育児、仕事をどうするかなど、生活スタイルを見直してみましょう。家族はどんなサポートができるでしょうか。

Q1. 母が乳がんの手術をする日に仕事を休めないのですが、どうすればよいでしょうか。

Q2. 母は乳がんの治療で入院中ですが、高齢のため退院後も引き続き、介護が必要になりそうです。今からどのような準備をすればよいですか。

Q3. 母は高齢で体調もよくないため、通院に付き添いたいのですが、仕事でなかなか休みがとれません。家族のための社会保障制度は何かありますか。

Q4. 自営のために仕事が休めず、高齢の母の通院に付き添えません。何かよい方法はありますか。

Q5. 母が乳がんの手術後、体力が低下して独りで生活するのが難しくなったので、介護保険サービスを利用したいと思っています。手続きはどうすればよいですか。さらに毎月の費用はどのくらいかかるのでしょうか。

Q6. 入院生活で困ったときは、誰に相談すればよいですか。

Q7. 補整下着やかつら、帽子はどこで買えますか。

Q8. 本人は「家に帰りたい」ようですが、家族が自宅で看取ることはできるのでしょうか。

Q9. 治療を受けながら母の生活がどのように変わっていくのか不安です。以前と同じような日常生活を送れるのでしょうか。

Q10. 治療後に運動をしてもよいですか。

Q11. 最後は本人が望んでいる生活を送らせたいのですが、どこに相談すればよいですか。

Q12. 母親が乳がんだと、私も乳がんになりやすいですか。

Q1. 母が乳がんの手術をする日に仕事を休めないのですが、どうすればよいでしょうか。

不測の事態に備えて、あらかじめ連絡方法などを確認しておきます。

手術日の家族の立ち会いに関しては、病院ごとの手続きがあるはずです。担当医や看護師によく確認しましょう。家族が必ずしも手術に立ち会わなくてもよいですが、通常は手術後すぐに執刀医から手術時の状況や病状に関する説明があるので、できれば患者さんの親族や親しい友人などに立ち会ってもらえると安心です。それが難しい場合は、執刀医の説明を受ける日時をあらかじめ決めておきましょう。

また、手術中や手術の前後にどのような事態が考えられるのか、何かあったときに最初に誰にどのように連絡してもらうのかなどを確認し、手術当日に不測の事態が起こっても対応できるように準備しておきます。

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手術やその後の経過について知りたいとき
聖路加国際病院ブレストセンター「乳がんの治療を受けられる方へ」(PDF)

Q2. 母は乳がんの治療で入院中ですが、高齢のため退院後も引き続き、介護が必要になりそうです。今からどのような準備をすればよいですか。

退院調整看護師やメディカル・ソーシャルワーカー(MSW)に相談してサポートしてもらいましょう。介護保険サービスの利用には時間がかかるので、患者さんが入院中から手続きを始めます。

現在、多くの病院では「退院調整看護師」と呼ばれる看護師やメディカル・ソーシャルワーカー(MSW)を配置し、退院に向けた支援に取り組んでいます。退院調整看護師やMSWは、担当医や病棟看護師をはじめ、在宅医、訪問看護師、ケアマネジャー(介護支援専門員)など、在宅ケアチームとも連携しながら、患者さんが自宅に戻った後も困らないように療養体制を整えてくれます。

高齢の患者さんや入退院を繰り返す患者さんなど、退院後も引き続き介護が必要になりそうなときは入院した時点から早めにかかわることが増えています。しかし、このような働きかけがない場合は、担当医または病棟看護師に相談し、退院調整看護師に取り次いでもらいましょう。退院調整看護師が配置されていないときはMSWを紹介してもらいます。

また、自宅で介護をするにあたっては、ご家族の負担を減らすためにも介護保険サービスを利用したいものです。介護保険サービスを受けるには自治体(市区町村の介護保険担当課もしくは地域包括支援センター)に申請したうえで訪問調査と審査を経て、要介護認定を受ける必要があります。

この手続きには時間がかかるので、患者さんが入院中から準備を進めましょう。もしも要介護認定の判定結果が退院に間に合わなくても、介護保険の申請をしていれば暫定ケアプランにもとづいて介護保険サービスを利用することができます。介護保険の手続きについてわからないことがあればMSWに確認しましょう。

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介護保険制度の手続きやサービスについて知りたいのなら
東京都福祉保健局「介護保険パンフレット」

Q3. 母は高齢で体調もよくないため、通院に付き添いたいのですが、仕事でなかなか休みがとれません。家族のための社会保障制度は何かありますか。

育児・介護休業法には、通院の付き添いなど介護が必要な日だけ休める「介護休暇制度」があります。勤務する会社ではどのような制度が利用できるのかを人事担当者に確認してみましょう。

育児・介護休業法では、働く人が介護と仕事を両立できるようにいろいろな制度が設けられています。そのうち、通院の付き添いなど介護が必要な日だけ休める制度に「介護休暇制度」があります。これは、要介護状態にある家族の介護をしている従業員は、対象となる家族が要介護状態に至るごとに1回、通算93日まで休暇を取得することができるというものです。

企業によっては対象となる家族の範囲を広げたり、取得できる日数を増やしたり、介護休暇制度を充実させているところもあるようですが、従業員100人以下の企業は2012年6月30日まで義務化が猶予されていますので、介護休暇制度がない場合もあります。この制度は、ある一定の条件を満たしている期間雇用者(同一の事業主に1年以上雇用されているなど)も利用できます。

このほか、企業には介護のために「時間外労働」や「深夜業」を制限する制度、また「短時間勤務制度」(介護のために所定の労働時間の短縮を図る)などを設けることが法律によって定められていますので、勤務する会社ではどのような制度が利用できるのかを人事担当者に確認してみましょう。また、家族の介護をしながら仕事を続けることを理解してもらえるように上司や同僚にも相談したいものです。

なお、育児・介護休業法による制度を利用した際に起こったトラブル(パートタイム従業員になるように強要された、給料を減額されたなど)についての相談は、各都道府県の労働局雇用均等室で受け付けています。

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育児・介護休業法による制度について知りたいのなら
厚生労働省・財団法人21世紀職業財団「両立支援のひろば/働く方々へ」

雇用均等室の所在について知りたいのなら
厚生労働省「労働局雇用均等室」

Q4. 自営のために仕事が休めず、高齢の母の通院に付き添えません。何かよい方法はありますか。

高齢者の場合は、病院への送迎サービスやホームヘルパーの付き添いなどの介護保険サービスを利用する方法があります。通院に関して困ったことがあれば、メディカル・ソーシャルワーカー(MSW)に相談しましょう。

65歳以上の高齢者の場合は介護保険サービスを利用できるため、まず介護保険の申請を行い、要介護認定を受けましょう。そのうえで、ケアマネジャー(介護支援専門員)に相談して病院への送迎サービスやホームヘルパーの付き添いなどのケアプランを組んでもらいます。介護保険の手続きには時間がかかりますが、介護保険の申請をしていれば暫定ケアプランにもとづいて介護保険サービスを開始することができます。

また、自宅から病院への送迎だけでよい場合は「福祉有償運送サービス」を利用する方法もあります。これは社会福祉協議会や訪問介護サービスを提供する訪問介護事業所などが行っているサービスで、通常のタクシーの半額程度の料金で利用できるため、経済的な負担も軽減できます。

がん患者さんの通院に関して困ったことがあれば、治療を受けている病院もしくはがん診療連携拠点病院に設置されている相談支援センターのメディカル・ソーシャルワーカー(MSW)に相談しましょう。相談支援センターでは、地域の患者さんやご家族からの相談も受け付けています。

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介護保険制度の手続きやサービスについて知りたいのなら
東京都福祉保健局「介護保険パンフレット」

相談支援センターの所在について知りたいのなら
「がん情報サービス」:相談支援センターの情報

Q5. 母が乳がんの手術後、体力が低下して独りで生活するのが難しくなったので、介護保険サービスを利用したいと思っています。手続きはどうすればよいですか。さらに毎月の費用はどのくらいかかるのでしょうか。

介護保険を利用するには自治体への申請が必要です。要介護認定を受けたうえでサービスは開始され、利用者の自己負担金はサービス費用の1割になります。

介護保険サービスを利用するには、自治体への申請がまず必要です。自治体で配布される介護保険の申請書を記入したうえで、65歳以上の人は介護保険証を添えて市区町村の介護保険担当課もしくは地域包括支援センターに提出します。

その後、市区町村から派遣された認定調査員が家庭を訪問し、利用者の心身の状態や日常生活の状況に関する聞き取り調査を行います。同時に市区町村の担当課では主治医(病院の担当医または地域のかかりつけ医)に意見書の作成を依頼し、後日それらの資料をもとに要介護認定の審査が行われ、要介護度が判定されます。この期間は通常1か月ほどかかるといわれています。

要介護度は7段階(要支援1・2、要介護1~5)に区分され、段階に応じて必要な介護サービスの量が決められています。要介護認定の区分が決定すれば、ケアプラン(居宅支援サービス計画書)を作成することになりますが、要支援1・2と認定された人は地域包括支援センターで利用できるサービスなどの助言を受け、プランを組むことになります。

要介護1~5に認定された人は、地域の居宅介護支援事業所に所属するケアマネジャー(介護支援専門員)の中から、利用者や家族が自由に選んだケアマネジャーと相談しながらケアプランを組んでいくことになります。

介護保険サービスの自己負担金はサービス費用の1割になりますが、それぞれの区分ごとに限度額(表)が設けられており、限度額を超えた分は全額自己負担になります。介護保険についてわからないことがあれば、治療を受けている病院もしくはがん診療連携拠点病院に設置されている相談支援センターのメディカル・ソーシャルワーカー(MSW)に相談しましょう。相談支援センターでは、地域の患者さんやご家族からの相談も受け付けています。

■表 居宅サービスの利用限度額

要介護状態支給限度額(1月当たり)本人負担(原則1割)
要支援149,700円4,970円
要支援2104,000円10,400円
要介護1165,800円16,580円
要介護2194,800円19,480円
要介護3267,500円26,750円
要介護4306,000円30,600円
要介護5358,300円35,830円

※標準的な額のため、地域区分により異なる場合があります。

対象サービス:
訪問介護・訪問入浴介護・訪問看護・訪問リハビリテーション・通所介護・通所リハビリテーション・短期入所生活介護・短期入所療養介護・福祉用具貸与・地域密着型サービス

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介護保険制度の手続きやサービスについて知りたいのなら
東京都福祉保健局「介護保険パンフレット」

相談支援センターの所在について知りたいのなら
「がん情報サービス」:相談支援センターの情報

Q6. 入院生活で困ったときは、誰に相談すればよいですか。

病棟の看護師に相談しましょう。入院から退院まで同じ看護師が患者さんをサポートする「プライマリーナース制」を取り入れる病院も増えています。

手術後に一人でトイレに行けない、同室の患者さんのいびきが気になって眠れないなど、入院生活では予想もしなかった出来事がいろいろ起こります。入院生活を快適に過ごすことは早い回復につながります。困ったときは我慢せずに病棟の看護師に相談してみましょう。患者さんの訴えに耳を傾け、相談に応じるのも看護師の大切な役割の一つです。最近では「プライマリーナース制」といって、入院から退院まで一人の患者さんを同じ看護師が受け持つ仕組みの病院も増えてきました。

また、病室を変わりたいときやほかの入院患者さんとの間でトラブルが起こったときは、病棟の責任者である看護師長に相談したほうが早く解決することもあります。入院費をはじめ経済的な問題で困ったときは、看護師長から医療ソーシャルワーカーを紹介してもらうとよいでしょう。

Q7. 補整下着やかつら、帽子はどこで買えますか。

補整下着やかつら、帽子の購入先の情報は病棟看護師が教えてくれます。サンプル品を展示している病院もあります。さらに詳しい情報が知りたいときは、乳がん看護認定看護師に相談してみましょう。

乳房切除術を受けると乳房のふくらみがなくなるため、左右の胸の違いが目立つだけでなく、胸の重さに差が生じることによって体のバランスが取れなくなることがあります。このような不具合を調整し、外見もカバーするのが補整下着です。また、乳がんの化学療法で使用される抗がん剤の多くは脱毛の副作用が起こりやすく、治療を開始して2~3週間後に髪の毛などが抜け始めます。治療が終われば再び生えてきますが、治療中は脱毛を予防する有効な手段がないため、かつらや帽子などで対応することになります。

補整下着やかつら、帽子に関する基本的な知識、購入先などの情報は入院中に病棟看護師が教えてくれます。病院によってはサンプル品を展示しているところもあります。商品の選び方や購入する際のポイント、代用品の工夫などの詳しい情報が知りたい場合は、乳がん看護認定看護師(日本看護協会の認定資格。乳がん看護の分野で熟練した看護技術と知識を身につけた看護師)に相談するとよいでしょう。がん診療拠点病院で活動している乳がん看護認定看護師の中には、その病院で治療を受けていない患者や家族の相談に応じてくれる人もいます。

がん診療拠点病院に設置されている相談支援センターにまず連絡し、その病院に乳がん看護認定看護師が所属していれば紹介してもらいましょう。

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相談支援センターの所在について知りたいのなら
「がん情報サービス」:相談支援センターの情報

乳がん看護認定看護師の所在について知りたいのなら
日本看護協会「乳がん看護認定登録者一覧」

Q8. 本人は「家に帰りたい」ようですが、家族が自宅で看取ることはできるのでしょうか。

在宅ケアチーム(在宅医、訪問看護師、保険薬局薬剤師、ヘルパーなど)によるサポート体制をつくり、家族も医療者からしっかり心のケアを受けることができれば、自宅で看取ることは十分可能です。

自宅で看取る際に家族がいちばん心配になるのが介護の負担だといわれています。しかし、がん患者さんの看取りをサポートしている在宅診療所が行った調査によると、亡くなる前日または当日まで半数の患者さんが、亡くなる1週間前では大半の患者さんが、自分でトイレに行くことができたそうです。つまり、一般的にがん患者さんは寝たきりになることは少なく、家族の身体的介護の負担はそれほど大きくないといえます。

それよりも大変なのは精神的な負担だといわれています。患者さんが少しずつ衰弱し、死がだんだん近づいてくることをずっと見ていなければならない家族は、非常につらい精神状態に置かれます。自宅で看取るためには、患者さんだけでなく、家族もサポートをしてもらう必要があります。言い換えれば、在宅ケアチームによるサポート体制をつくり、しっかりケアを受けることができれば、自宅で看取ることは十分に可能です。

希望を叶えると決めたら、患者さんの体力が残っているうちに早めに担当医や病棟看護師に相談しましょう。病状が進みすぎるとタイミングを失い、家に帰れないことがあるからです。そして、病院の退院調整看護師や医療ソーシャルワーカー、地域のケアマネージャーの力を借りて、患者さんと家族を助けてくれる在宅ケアチーム(在宅医、訪問看護師、保険薬局薬剤師、ヘルパーなど)をつくり、自宅での療養や介護に備えましょう。なお、がんのターミナル期は介護保険の特定疾患に該当しますので、40~64歳の人でも介護保険サービスが利用できます。

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在宅ホスピスや緩和ケアを提供する診療所の所在を知りたいのなら
NPO法人日本ホスピス緩和ケア協会「緩和ケアを提供する診療所・訪問看護ステーション等」
日本在宅ホスピス協会「末期がんの方の在宅ケアデータベース」
日本ホスピス・在宅ケア研究会「在宅医リスト」

介護保険制度の手続きやサービスについて知りたいのなら
東京都福祉保健局「介護保険パンフレット」

Q9. 治療を受けながら母の生活がどのように変わっていくのか不安です。以前と同じような日常生活を送れるのでしょうか。

乳がんは経過の長い病気です。治療を受けることによって起こる不安は、そのつど解消していきながら、がんの治療とつき合っていきましょう。日常生活にも不便なことが出てきますので、治療が始まる前に療養生活の準備や治療に伴う体への負担、生活に与える影響について担当医や看護師に尋ねるようにしましょう。

手術で乳がんを取り除いたあとも必要に応じてホルモン療法や化学療法、放射線療法が行われます。また、治療に伴う副作用対策が改善されてきたことから、入院せずに外来通院で治療が行われることも多くなってきました。日常生活にもいろいろ不便なことが出てきますので、これらの治療を始める前に、療養生活の準備や治療に伴う体への負担、生活に与える影響について担当医や看護師に尋ねるようにしましょう。見通しがつくことによって安心できますし、治療中の生活をできるだけ快適に過ごす方法を考えることができます。

また、患者さんの日常生活に支障を来たす場合は、公的な福祉サービスや介護サービスを積極的に活用し、サポート体制を整えましょう。困ったことがあれば何でも遠慮せずに看護師やメディカルソーシャルワーカーに相談することをおすすめします。がん診療連携拠点病院に併設されている相談支援センターでは、地域の患者さんや家族からの相談にも応じています。

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乳がんの治療について知りたいなら
国立がん研究センターがん対策情報センター「がん情報サービス」:乳がん
「がん情報サービス」:診断・治療方法
「がん情報サービス」:各種がんシリーズの冊子・乳がん

生活支援の情報について知りたいのなら
国立がん研究センターがん対策情報センター「がん情報サービス」:がんとつき合う・生活の支援が必要なとき

相談支援センターの所在について知りたいのなら
「がん情報サービス」:相談支援センターの情報

Q10. 治療後に運動をしてもよいですか。

担当医に相談のうえ、適度な運動を。治療後の体力の回復や気分転換、リラックスに役立ちます。

体力を回復させたり、維持したりするために、適度な運動は大切です。とくに入退院の前後では運動量が落ち、体力も低下しやすいので、無理のない範囲で軽い運動を行い、少しずつ体力をつけたいものです。

担当医から運動の許可が下りたら、家の中で、その場での足踏み、深い呼吸の繰り返しなど簡単な動きから始めてみましょう。家事の量を少しずつ増やしていくだけでもよい運動になります。体力が回復してきたら、短時間の散歩などに出てみましょう。患者さんが外に出るのを怖がったり、億劫がったりしているようなら、最初はご家族が付き添われるとお互いに安心です。

また、筋肉を伸縮させるストレッチで体をほぐし、心身をリラックスさせることもよいでしょう。肩や腕を動かす運動、胸や背中の筋肉を伸ばす運動は、乳がんの手術後のリハビリテーションとしても最適です。ただし、方法はリハビリ医や看護師、理学療法士などに正しく教えてもらいましょう。

もちろん、体調が悪いときには無理に運動しないことが大事です。

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療養中の運動について知りたいなら
国立がん研究センターがん対策情報センター「がん情報サービス」:患者必携 がんになったら手にとるガイド「体調を整えるには」

Q11. 最後は本人が望んでいる生活を送らせたいのですが、どこに相談すればよいですか。

現在かかっている病院の「医療相談室」あるいはがん診療連携拠点病院に設置されている「相談支援センター」のメディカルソーシャルワーカーに相談してみましょう。

患者さんが最後の時間を過ごす主な場所としては、病院の一般病棟のほかに自宅や病院の緩和ケア病棟、ホスピスなどがあります。このうち自宅や緩和ケア病棟、ホスピスを選択する場合は、患者さんの希望をかなえる形で医療体制を整えるのには時間がかかります。緩和ケア病棟やホスピスでは、療養を希望する患者さんや家族が多く、施設によっては予約や待機が必要です。また、病状が進みすぎると、自宅に帰れるタイミングを失うこともあります。

そのため、患者さんが最後にどのような生活を望んでいるのかを早めに確認して、現在かかっている病院の「医療相談室」あるいはがん診療連携拠点病院に設置されている「相談支援センター」のメディカルソーシャルワーカーに相談し、医療体制を整えましょう。入院中であれば、患者さんの気持ちを確かめる方法を含め、その手順について病棟看護師や退院調整ナースに相談するのもよいでしょう。

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相談支援センターの所在について知りたいのなら
「がん情報サービス」:相談支援センターの情報

緩和ケア病棟の所在について知りたいなら
国立がん研究センターがん対策情報センター「がん情報サービス」:緩和ケア病棟のある病院の情報
日本ホスピス緩和ケア協会「受けられる場所を探す」:ホスピス緩和ケア病棟

在宅ホスピスや緩和ケアを提供する診療所の所在を知りたいのなら
NPO法人日本ホスピス緩和ケア協会「緩和ケアを提供する診療所・訪問看護ステーション等」
日本在宅ホスピス協会「末期がんの方の在宅ケアデータベース」
日本ホスピス・在宅ケア研究会「在宅医リスト」

Q12. 母親が乳がんだと、私も乳がんになりやすいですか。

親族に乳がん患者さんがいる人は、いない人に比べて2倍以上、乳がんにかかりやすいことがわかっています。家族性乳がんは乳がん全体の20%前後、その中でも明らかな遺伝子がわかってきている遺伝性の乳がんは5~10%を占める程度です。心配な場合は、お母様の担当医に相談しましょう。

さまざまな研究から親族(親、子、姉妹)に乳がん患者さんがいる人は、いない人に比べて2倍以上、乳がんにかかりやすいことがわかっています。そして、そのリスクは乳がんを発症した親族の数が多いほど高まるといわれています。また、卵巣がんにかかった人が親族内にいる場合も乳がんのリスクが高まることが知られています。ただし、家族性乳がんは乳がん全体の20%前後、その中でも明らかな遺伝子がわかってきている遺伝性の乳がんは5~10%を占める程度で少数に過ぎません。乳がん家系だと思っていても医学的には遺伝の可能性がない場合もありますし、家族に乳がん患者がいなくても遺伝性が疑われる場合もあります。

日本乳癌学会の診療ガイドラインでは、①乳がんと診断された年齢が若い(50歳以下)、②1人の患者が同時または異なる時期に、2つ以上の原発性乳がんを発症した場合(両側の乳房に乳がんが認められた場合や、同じ側の乳房内に複数のタイプの乳がんがある場合を含む)、③1人の患者が乳がんと同時または異なる時期に、卵巣がん、卵管がん、原発性腹膜がんのいずれかを発症した場合、④父方母方のいずれかの家系の近縁者に2人以上、乳がん患者がいる場合、もしくは乳がん患者が1人しかいなくても卵巣がん、卵管がん、原発性腹膜がんのいずれかの患者がいる場合、⑤乳がん患者が男性である場合の5項目のうち、1つでもあてはまるときは遺伝性乳がんの可能性を考慮し、詳細な評価を行うことが望ましいとされています。

専門的な検査(遺伝子検査)によって、お母様の乳がんが遺伝性の乳がんであることを確認することもできます。心配な場合はお母様の担当医に相談し、遺伝カウンセリングを紹介してもらうことも一つの方法です。近年、遺伝カウンセリングや家族性腫瘍の専門外来を設置する大学病院も増えています。いずれにしても家族に乳がん患者がいる人は、乳がんのリスクが決して低くないことを知り、定期的に検診を受けて早期発見や早期治療につなげていきましょう。

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家族性腫瘍について詳しく知りたいのなら
国立がん研究センターがん対策情報センター「がん情報サービス」:遺伝性腫瘍・家族性腫瘍