用語解説 ~診察室で耳にする用語~
ポート
抗がん剤治療で使う薬は、飲み薬と点滴に分かれます。点滴による治療では腕の静脈に注射針を刺して薬を投与します。点滴回数は初期治療の手術前や後の場合には4〜30回、遠隔転移の場合にはより長時間にわたり点滴が必要になることがあります。
抗がん剤の投与を腕の静脈から何度か行っていくうちに、血管が傷つき、血管に針が入りにくくなることがあります。これらを防ぐために鎖骨付近や上腕などからチューブ(カテーテル)を心臓近くの静脈に入れて、チューブ先端の薬の注入口を皮下に埋め込む方法があります。このカテーテルと薬の注入口本体をポートといい、ポートを埋め込む手術には局所麻酔で約30分〜1時間程度の時間がかかります。
脳転移に対する放射線治療
放射線のかけ方には大きく分けて2通りあります。1つは全脳照射といって、脳全体に放射線をかける方法、もう1つは定位放射線照射といって、病巣のみに放射線をかける方法です。
全脳照射の方法
脳全体に放射線を照射します。1回3グレイ×10回の計30グレイを2週間で行うのが最も一般的でしたが、神経の副作用を軽くするために1回2.5グレイ×15回の計37.5グレイを3週間で行う方法も採用されています。ほかにも、1回2グレイ×10回の計20グレイ、1回4グレイ×5回の計20グレイ、1回2グレイ×25回の計50グレ イなどさまざまな方法があります。
定位放射線照射
定位放射線照射は病巣のみに的を絞って放射線を照射します。照射する装置にはガンマナイフ、リニアックナイフ、サイバーナイフ、ノバリスなどさまざまなものがありますが、放射線を出す方法が違うだけなので、用いる装置によって治療成績に差があるわけではありません。定位放射線照射は、通常1〜5回程度の照射治療です。短期間の入院で治療を行う病院が多いようです。
緩和ケア
乳がんになったことで患者さんとその家族は、さまざまな苦痛や問題を抱えます。それは単に痛みといった身体的な症状だけでなく、不安や落ち込んだ気分、女性としての精神的なつらさ、日々の生活で生じる社会経済的な問題、そしてスピリチュアルな問題(スピリチュアルは日本語で霊的・魂と訳しますが、その人自身の人生の意味や生きる意味などに相当します)などです。
緩和ケアとは、こうした身体的な苦痛や気持ちのつらさなどを少しでも和らげるための対処を行い、患者さんあるいはその家族も含めて援助することです。そして、QOL(生活の質あるいは生き方の質)を保つことで、自分らしく過ごしていただくことを目的としています。
緩和ケアは病気の状態や時期に関係なく、診断された早期から療養の経過を通じて、その人らしい生活が保てるよう医学的な側面ばかりでなく、さまざまな援助をします。
緩和ケアのチーム医療
治療中は、痛みや苦しみなど、いろいろな症状が出ることがあります。これらの症状を和らげるためには、専門的なケアが必要とされ、「緩和ケア」と呼ばれています。緩和ケアは、以前は「終末期に提供されるケア」とされた時期があったため、がんの治療ができなくなった人のための最後の医療・ケアと誤解されがちでしたが、現在は「がん治療の早期から並行して始めるケア」というように考え方が変わりました。一般病院でも緩和ケアチームという多職種の医療スタッフ(医師、看護師、薬剤師、ソーシャルワーカーら)がかかわることによって、症状緩和を行うようになってきたので、これらの専門家の力を借りるのもよいことだと思います。
参考文献:「患者さんのための乳がん診療ガイドライン」2014年版(日本乳癌学会編) 金原出版株式会社
日本サイコオンコロジー学会 http://jpos-society.org/about/psycho-oncology.php

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