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慢性骨髄性白血病(CML)の情報サイト

CML(慢性骨髄性白血病)と共に自分らしく生きる

2024年9月21日に「ハイブリッド市民公開講座:CML(慢性骨髄性白血病)と共に自分らしく生きる」を開催しました。
無治療寛解(Treatment-free remission:TFR)や共同意思決定(Shared Decision-Making:SDM)などのテーマを中心に、「医師と患者さんで考えるこれからのCML治療」を紹介しています。ぜひご覧ください。

開催日時
2024年9月21日(土)15:00~16:40

講演 CMLと上手に付き合うために

松木 絵里 先生 慶應義塾大学医学部 血液内科

慢性骨髄性白血病(CML)の概要と診断

慢性骨髄性白血病(CML)は血液のがんの一種です。造血幹細胞のBCR遺伝子とABL1遺伝子が融合してフィラデルフィア染色体が発生し、そこから産生されたBCR::ABL1蛋白という異常なたんぱく質の指令によって過剰な白血球細胞の増殖が起きている状態です。
自覚症状がなく、健診などの際に血液検査の異常で発見されることが多いのですが、疲労感、体重減少、寝汗、発熱、左の脇腹の疼痛や膨満感などの症状をきっかけに受診されて診断されることもあります。
慢性期、移行期を経て、急性転化期へと進行し、治療をしなかった場合には通常3年から5年程度で致命的な状態に至ります。

CML治療の歴史と現状

CML患者が初めて報告されたのは1845年といわれています。当時は細胞が異常に増殖する病気ということしかわからず、細胞数を減らすためにヒ素や放射線治療が行われていました。1960年になってフィラデルフィア染色体が発見され、その後、医学が進歩して造血幹細胞移植が行われるようになってから、病気を治せる可能性が初めて出てきました。ただ、造血幹細胞移植は患者さんの体力的負担が大きく、ドナーを見つけるのが難しいという課題があり、移植を伴わない治療法が模索されてきました。
2000年代に入り、CMLの進行に大きくかかわっているBCR::ABL1蛋白の働きを抑えるチロシンキナーゼ阻害剤(TKI)が発売され、慢性骨性白血病の治療が大きく変わりました。現在、日本では6種類のTKIが使えるようになり、状況に合わせて治療を選べるようになっています。

CML治療の目標と効果判定

TKIにより多くの方が深い奏効を得られるようになったことから、CMLの患者さんの多くは、ある意味糖尿病や高血圧と同じように、ずっとつきあっていく病気になりました。TKIを服用し、治療効果を確認しながら、副作用や合併症をコントロールしてQOLの保たれた人生を送り、寿命をまっとうすることが治療の目標になりました。さらに、一部の患者さんではTKIを中止した後も奏効が維持できることが報告されており、このTFR(無治療寛解)を目指しながら治療を選択できるようになっています。ただし、TFRには厳格な条件があり、断薬によるリスクもありますので、主治医とよく相談することが大切です。どの程度の効果がどれくらいの期間続いたらTFRを試みても良いか、について若干のばらつきがあること、その達成率については薬剤ごとに異なることもあり、これらの内容を総合的に考えると、実際にTFRを試すことができるのはCMLと診断された患者さんの30%~40%程度と考えています。[1][2]

注:CMLの治療効果を把握するためには、BCR::ABL mRNAとABL mRNAを定量リアルタイムPCR法で解析し、その比を国際標準値(International Scale:IS)に変換して、微小残存病変を含む腫瘍量を推定します。初発の場合は、3ヶ月で10%未満、6ヶ月で1%未満、12ヶ月で0.1%未満達成を目標に治療を進めていきます。[3]

CML治療における課題と今後の展望

副作用や合併症のマネジメント

CML患者さんの生存率は時代とともに改善しています。近年では、CMLによって亡くなる患者さんよりも、治療の合併症を含め、CML以外による死亡率の方が高くなってきていることが報告されており、薬剤選択と生活習慣病を含めた合併症の管理の重要性が増しています。

妊娠希望の患者さんへの対応

TKIの妊孕性への影響についてはまだ明らかになっていませんが、TKIの種類によっては、服用中に妊娠すると胎児に奇形を生じるリスクが認められています。ただ、タイミングがあえば、妊孕性温存や計画的な治療中断などの方法を検討することも可能ですので、妊娠の希望がある場合には、事前に主治医と相談することをおすすめします。

医療者と患者とのコミュニケーション

複数の薬剤が使えるようになり、断薬や妊娠などの選択肢も増えた今、医療者と患者さんのコミュニケーションがますます重要になってきています。伝えたつもりでも伝わっていないということもありますので、お互いに確認しながら目標を共有し、意思決定を進めていく作業が必要です。

  1. TP Hughes, et al. Blood. 2016; 128 (1): 17–23.

  2. J Cortes, et al. Am J Hematol. 2019; 94(3): 346-357.

  3. Hochhaus A, et al. Leukemia. 2020; 34: 966-984.