ハイブリッド市民公開講座レポート(2024年9月21日開催)
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慢性骨髄性白血病(CML)の情報サイト
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2024年9月21日に「ハイブリッド市民公開講座:CML(慢性骨髄性白血病)と共に自分らしく生きる」を開催しました。
無治療寛解(Treatment-free remission:TFR)や共同意思決定(Shared Decision-Making:SDM)などのテーマを中心に、「医師と患者さんで考えるこれからのCML治療」を紹介しています。ぜひご覧ください。
開催日時
2024年9月21日(土)15:00~16:40
TFR(無治療寛解)と共同意思決定(Shared Decision-Making:SDM)
総合司会:
髙久 智生 先生 埼玉医科大学病院 血液内科 教授
パネリスト:
松木 絵里 先生 慶應義塾大学医学部 血液内科 専任講師
赤堀さん 慢性骨髄性白血病患者・家族の会 いずみの会
土屋さん 慢性骨髄性白血病患者・家族の会 いずみの会
赤堀さん
2013年、60歳の時にCMLと診断される。2016年にMR4.5を達成。2018年8月より断薬(TFR)。現在もMR4.5未満を継続中。
土屋さん
2007年にCMLと診断される。2023年にMR4.5を達成。現在はTFR達成を目標に治療を継続中で、日常生活で病気のことを忘れるくらい元気に過ごしている。
髙久先生
赤堀さん、土屋さんは、TFR(無治療寛解)について、いつ頃、どのように知りましたか。
赤堀さん
告知を受けた時にTFRの可能性について説明されましたが、その後は何も話はありませんでした。治療開始時からずっと副作用がつらく、心臓も心配になってきたのでMR4.5未満が継続できたのを機に、主治医に断薬を申し出ました。私は一気に断薬するよりも段階的に減薬した方が体に優しいと思い、最後のひと月はそれまでの半分に減薬したいと申し出て賛成してもらいました。私の場合は、聞いていたほどの離脱症状はなく断薬できました。
土屋さん
治療開始から5~6年たった頃に患者会でTFRのことを知り、主治医にTFRを目指したいと伝えました。現在は離脱症状への不安よりも断薬への希望が強く、目標に向けて頑張っているところです。
髙久先生
松木先生は、TFRについて患者さんにどのようにお話しされていますか。
松木先生
治療開始時には、薬について、原則として継続して服用するが、一定の条件が達成された場合には断薬できる可能性もあることをお伝えし、その後は、条件が達成された段階になってから、あらためてお声がけします。ただ、断薬がうまくいかない方も一定数いらっしゃいますので、あくまでひとつの選択肢としてお伝えするようにしています。断薬の可能性については現状ではまだ不明なことが多く、予測指標につながるデータが待たれるところです。
髙久先生
まだ情報が不足していることもあって、医療者と患者さんでは、断薬に対する考え方に差があるかもしれません。だからこそ共同意思決定が重要になってくると感じています。
髙久先生
副作用について、医師に伝えにくかったこと、困ったことなどはありましたか。
土屋さん
自分の症状が副作用によるものかどうかわからず、「関係ないかもしれないけれど」と前置きをつけて、遠慮しながら聞いていました。
松木先生
自分の症状を記録して診療時にお持ちいただけると、医師が全体像を把握し、治療や病気に関係ある症状かどうかを判断できます。「関係がない」と分かるだけでも安心につながるので、遠慮せずにお話しください。
赤堀さん
副作用について、前もって説明してもらえていたら、もう少し心の準備ができたのではないかと思います。症状を具体的に説明するのも難しかったですし、先生は副作用のことよりも、白血球の状態の方に重点を置いておられるのかなという印象を受けました。
髙久先生
病気をコントロールして、できればTFRを達成しようというゴールは、患者さんも医師も同じなのですが、医師は数値データに注目してしまう傾向がありますので、患者さんの生活の質を下げるような副作用にも丁寧に向き合うよう心掛けていく必要があるとあらためて感じています。
松木先生
CMLは初期の自覚症状が少なく、むしろ、治療開始後に薬の副作用も含めて、体調の変化を実感される方も多いかと思います。「進行を防ぐためには治療が必須であり、そこには副作用も伴う」という現実を患者さんが段階的に受け入れていけるように、医療者としてサポートしていきたいと思っています。
髙久先生
土屋さんは、治療開始後にご結婚されたとのことですが、妊孕性に関して、配偶者の方とどのようなお話をされましたか?
土屋さん
夫とは血液検査で異常が出る以前から交際していたので、異常が判明した時点で伝えて、治療や薬について一緒に調べていました。治療開始から4年後に、体調も落ち着いてきたので結婚しました。妊娠を目指していた時期もあって、医師には親身にサポートしてもらいました。妊娠には至りませんでしたが、医師、私たち夫婦が情報を共有して話し合う貴重な経験ができたと思っております。
髙久先生
私たち医療者は、妊娠などのライフイベントに関しても、できる限り患者さんに寄り添って考えたいと思っておりますので、土屋さんの「貴重な経験ができた」というお言葉を聞いて嬉しく思いました。
松木先生
不妊治療やその支援体制が時代とともに整備されてきて、提案できる選択肢が増えています。患者さんごとに状況が異なりますので、しっかりお話を伺って、その方に合ったアドバイスができるように心がけています。
髙久先生
今、患者と医師が共同で意思決定をする共同意思決定(SDM)の重要性がうたわれています。これについて、ご経験や思いをお聞かせください。
赤堀さん
以前、患者の集まりで、自分のことなのだから遠慮せずに医師に相談すればいいとアドバイスをいただいて、断薬についてもありのままの気持ちや希望を伝えてきました。そうして良かったと思っています。
断薬は「医師と患者の共同意思決定」になるかと思いますが、共同作業とするためには患者側の知識がレベルアップする必要があると思います。そのためにも断薬に向けて患者にとって理解しやすくかみ砕いた医学情報の発信をお願いしたいです。
土屋さん
安心して共同意思決定ができるように、セミナーなどで信頼できそうな先生を探して、現在の主治医を紹介してもらいました。現在は、治療目標を主治医と共有できていると感じています。
髙久先生
患者さんと医療者の双方が工夫してコミュニケーションをとっていくことが大切ですね。患者さんの中には、自分で決めたいという方だけでなく、担当医にすべてお任せしたいという方も大勢いらっしゃいます。専門家に任せるというのも共同意思決定のひとつの形ですので、その思いを医師に話していただければと思います。
松木先生
薬の選択や断薬については、特に共同意思決定が重要になります。医師が忙しそうで、相談するのを躊躇してしまうという患者さんもおられますが、メモや治療手帳などを活用していただくと限られた時間でも情報が共有しやすくなりますし、看護師や薬剤師などに相談いただくのもよい方法です。また、治療をすすめるうえで、仮に最初に医師に「お任せします」と言ったとしても、途中でそれを変えられないわけではない、ということを患者さんが理解できる工夫も必要だと考えています。
髙久先生
最後に、患者会の活動についての思いを教えてください。
赤堀さん
発症から2年後に、患者会に参加しました。同じ思いを共有できる仲間ができて病気に立ち向かえるようになったので、もっと早く参加すればよかったと思っています。
土屋さん
私も入会したのは発症から4年目ぐらいでしたが、診断されてから1~2年の期間が非常に不安だったので、その頃から入会していればよかったなと思います。他の方の病気との向き合い方から多くのことを学ぶことができ、治療の支えになりました。
松木先生
患者さんやご家族の情報源として、患者会をご紹介することがあります。患者会では信頼できる情報が得られるだけでなく、同じ病気の人同士のつながりができる素晴らしい機会となります。患者会の認知度向上と活動支援の促進を望んでいます。
髙久先生
私たち医療者にとっても、患者会を通して皆さんの声をお聞きできるのは非常に勉強になり、心強い存在です。医療の質の向上のためには患者会の方々の活動が重要であると感じています。